13日開幕の大阪・関西万博の成否は、日本維新の会の党勢に直結する。成功裏に終われば全国政党化への強い追い風になるが、不調だと執行部の責任論に発展しかねない。10月までの開催期間中には参院選が控えており、党関係者は気をもんでいる。(山本貴広)
「府民を代表し、皆様に心から歓迎の意を表します。明日から6か月間、世界が一つになる」
万博会場の大阪・夢洲で12日に行われた開会式で、維新の吉村代表(大阪府知事)は誇らしげに宣言した。
維新による万博の取り組みは2014年に遡る。党創設者の橋下徹大阪市長と松井一郎知事がこの年、地元経済の活性化にと誘致を表明、安倍首相や菅官房長官に熱心に働きかけて、開催にこぎつけた。
橋下、松井両氏は党を去ったものの、地盤の大阪で開催する万博が、低迷する党勢の浮揚や全国政党化への起爆剤になるとの期待感は強い。実際、府内での存在感向上はもちろん、吉村氏が府知事としてメディアに露出する機会も増えるため、全国に情報を発信する好機となるのは間違いない。
成否を判断する材料の一つが、入場券の売り上げだ。日本国際博覧会協会(万博協会)によると、会場管理や来場者輸送などの開催運営費は1160億円で、その83%を入場券収入で賄う。損益分岐点は1800万枚の販売と見積もるが、現状は約900万枚にとどまっている。
仮に赤字に陥れば、国や地元自治体による穴埋めも想定され、「身を切る改革」「無駄削減」が金看板の維新のイメージに傷が付くのは避けられない。府知事の吉村氏や維新に対する批判も出そうで、党幹部は「党の命運を左右する」と警戒する。
政府・与党との距離感も悩ましい。万博成功には政府との連携が欠かせないが、参院選を控えて、他の野党から「与党寄り」と批判を招くのは避けたい。一方で、「国と対立すれば、赤字が出た時に責任の押し付け合いになりかねない」(党関係者)との懸念もあり、一筋縄ではいかない。
21年夏に開催された東京五輪・パラリンピックはコロナ禍だったこともあって、菅政権の内閣支持率を大幅に引き上げるような効果はなく、菅首相は同年10月に退陣した。国家的なイベントが必ず党勢浮揚につながるとは言えなそうだ。