樫山幸夫(ジャーナリスト、元産経新聞論説委員長)【まとめ】・日米関税協議でトランプ大統領と会談した赤沢経済再生担当相は「格下に会っていただき感謝している」とへりくだった。・国を代表して交渉にあたっている自負心をもつべきーなどの批判が噴出。・赤沢発言で、いまなお続く日米関係の〝不均衡〟が明らかに。国民から失望、各国からは嘲笑を浴びかねない。 ■ 「卑下」「へつらい」に聞こえた赤沢発言赤沢亮正経済再生相とトランプ大統領との会談は4月16日(日本時間17日)、ホワイトハウスで行われた。赤沢氏は当初、ベッセント財務長官、グリア通商代表部(USTR)代表らと会談する予定だったが、直前になって、トランプ氏が自ら出席することが決まった。大統領との会談について、赤沢再生相は会談終了後、語った。「会ってきださったことは大変ありがたい」「(自分は)格下も格下なので、出てきて直接話をしてくださったことには感謝している」「暖かい配慮で、格下と会っていることを感じさせない器の大きさだった」―。 大統領への強い謝意の一方で 為替や日米の安全保障などについては、「為替については出なかった」と述べたにとどまり、「具体的なやりとりについては差し控えたい」とたびたび繰り返した。超大国アメリカの元首である大統領と、失礼ながら初入閣のヒラ大臣とでは格が違うのは当然だが、自ら「格下」を繰り返す必要などさらさらなかった。卑下、へつらいにも聞こえただけに厳しい指摘が相次いだのは当然だった。立憲民主党の野田佳彦代表(元首相)が「国を代表した矜持というものがある。(小柄な)舞の海が(巨漢の横綱)曙に威圧感を感じたろうが、小兵力士にも技がある。国を背負って交渉するには、何するものぞという気概を持ってほしかった」(18日の記者会見)と述べ、大相撲にたとえて苦言を呈したが、これにつきるだろう。赤沢氏は帰国後、「格下は事実だ。格上の大統領でも言うべきことは言った」と釈明したが、説得力に欠けた。■ 先生に褒められたい生徒か赤沢再生相の発言を聞いて、筆者は古い話だが、30年以上も前に日米間で行われた「構造協議」を思い起こした。 日本の巨額貿易黒字解消を目的とした交渉は海部俊樹内閣時代の1990年4月、中間報告にこぎつけた。妥結翌朝の官房長官の記者会見で当時の坂本三十次長官は、「細部の詰めが残っている」として肝心の内容について説明を避け、一方では聞かれもしないのに、ブッシュ米大統(先代)から「日本の努力に感謝するという懇切なメッセージがあった」と得々と繰り返した。
樫山幸夫(ジャーナリスト、元産経新聞論説委員長)
【まとめ】
・日米関税協議でトランプ大統領と会談した赤沢経済再生担当相は「格下に会っていただき感謝している」とへりくだった。
・国を代表して交渉にあたっている自負心をもつべきーなどの批判が噴出。
・赤沢発言で、いまなお続く日米関係の〝不均衡〟が明らかに。国民から失望、各国からは嘲笑を浴びかねない。
■ 「卑下」「へつらい」に聞こえた赤沢発言
赤沢亮正経済再生相とトランプ大統領との会談は4月16日(日本時間17日)、ホワイトハウスで行われた。
赤沢氏は当初、ベッセント財務長官、グリア通商代表部(USTR)代表らと会談する予定だったが、直前になって、トランプ氏が自ら出席することが決まった。
大統領との会談について、赤沢再生相は会談終了後、語った。
「会ってきださったことは大変ありがたい」「(自分は)格下も格下なので、出てきて直接話をしてくださったことには感謝している」「暖かい配慮で、格下と会っていることを感じさせない器の大きさだった」―。
大統領への強い謝意の一方で 為替や日米の安全保障などについては、「為替については出なかった」と述べたにとどまり、「具体的なやりとりについては差し控えたい」とたびたび繰り返した。
超大国アメリカの元首である大統領と、失礼ながら初入閣のヒラ大臣とでは格が違うのは当然だが、自ら「格下」を繰り返す必要などさらさらなかった。卑下、へつらいにも聞こえただけに厳しい指摘が相次いだのは当然だった。
立憲民主党の野田佳彦代表(元首相)が「国を代表した矜持というものがある。(小柄な)舞の海が(巨漢の横綱)曙に威圧感を感じたろうが、小兵力士にも技がある。国を背負って交渉するには、何するものぞという気概を持ってほしかった」(18日の記者会見)と述べ、大相撲にたとえて苦言を呈したが、これにつきるだろう。
赤沢氏は帰国後、「格下は事実だ。格上の大統領でも言うべきことは言った」と釈明したが、説得力に欠けた。
■ 先生に褒められたい生徒か
赤沢再生相の発言を聞いて、筆者は古い話だが、30年以上も前に日米間で行われた「構造協議」を思い起こした。
日本の巨額貿易黒字解消を目的とした交渉は海部俊樹内閣時代の1990年4月、中間報告にこぎつけた。
妥結翌朝の官房長官の記者会見で当時の坂本三十次長官は、「細部の詰めが残っている」として肝心の内容について説明を避け、一方では聞かれもしないのに、ブッシュ米大統(先代)から「日本の努力に感謝するという懇切なメッセージがあった」と得々と繰り返した。