「森永ヒ素ミルク中毒事件」をめぐる裁判。救済が不十分として賠償を求めていた被害者の訴えは退けられました。
1955年、森永乳業が製造した粉ミルクにヒ素を含む有害物質が混入し、健康被害が出た「森永ヒ素ミルク中毒事件」。1970年代には森永乳業が被害者団体や国との合意に基づいて事業資金を負担する救済機関がつくられ、被害者に金銭給付などを行っています。
大阪市に住む70歳の女性は、乳幼児期に事件の粉ミルクを飲み、ヒ素中毒の症状を発症。40歳の時には首の骨が変形して脊髄が圧迫される「頚髄症」と診断され、現在は支えなしで歩くことが困難です。女性は「年齢を重ねるにつれ、症状が悪化し続けている。救済機関からの手当も不十分」として、森永乳業に対し慰謝料など5500万円の賠償を求め提訴していました。
裁判で争点になったのが、不法行為から20年たてば賠償請求権が消滅するとされる「除斥期間」。4月22日の判決で大阪地裁は「遅くとも頚髄症の診断を受けた1995年が除斥期間の起算点」と判断。「裁判を起こした2022年の時点ではすでに20年以上が経過していて、賠償請求権は消滅している」として、女性の訴えを退けました。
(原告女性)「(Qこれからも闘う覚悟?)ここまでの人生を狂わされたんですからね。被害者が生きている限りは終わることはありません」
女性側は控訴する方針です。