太陽光や風力発電の施設設置を巡って、北海道各地で計画反対や規制の動きが顕在化している。自然環境への影響に対する懸念が背景にあり、事業者が計画を見直すケースも。北海道内では再生可能エネルギーの導入が増えており、事業者とのトラブルを避けるため対策に乗り出した自治体もある。
北海道遠軽町では、風力発電事業を手がける「青天ウィンドファーム」(青森市)が計画する仮称「遠軽ウィンドファーム事業」に住民らが不安を募らせる。
約1年前に明らかになった計画では、同町美山の丘陵地に風力発電機12基を設置し、4万8000キロ・ワットの発電を見込む。同社の幹部が関連会社の破産前に資産を隠したとして逮捕され、2月に予定していた説明会は延期されたままだ。
住民側の一部には元々、同社への不信感がある。同社は昨年5~7月に住民説明会や意見書の受け付けを行った。だが、郵送した意見書が同社の不備により宛先不明で戻ってきたことに住民側が反発。同社が改めて秋に説明会を開催し、意見を受け付ける事態になった。
事業は周辺環境への影響を調査する前段階だが、近くに閉山した金などの鉱山があることから、住民らでつくる「遠軽風力発電を考える会」は重金属などが川に流れ出す可能性を指摘。角舘正勝代表(62)は「下流では湧別町も取水している。遠軽だけの問題ではない」と主張する。
同社は準備は続け、延期されたままの説明会も日程などを調整しているという。広報担当者は「住民の方の不安は理解している。丁寧に説明しながら進めたい」と話す。
国立公園となっている釧路湿原とその周辺などで太陽光発電施設の建設が相次ぐ釧路市は、太陽光パネルの設置を規制する条例の制定を目指している。
懸念するのは、開発が厳しく規制される国立公園から外れた「市街化調整区域」で建設が進んでいる現状だ。パネル設置は違法ではないが、希少な動植物が多くすむ点では、公園内と大きく変わらない。
市が示した条例案の概要によると、市内全域でのパネル設置を「許可制」にする。市街化調整区域は「特別保全区域」とし、専門家が事業者の計画を審査。希少生物に影響を与えると判断した場合は設置を許可しない。
条例案は6月市議会で提出する予定だったが、事業者から訴訟を起こされるリスクへの懸念や専門家らとの調整で提案は9月市議会にずれ込む見通しだ。鶴間秀典市長は4月2日の記者会見で「時間がかかっているが、全庁一丸でしっかり進める」と述べた。北海道教育大元副学長で、市環境審議会の神田房行会長は「実効性ある条例にするには、希少生物の生息地を調査して具体的に示すなど、規制する合理的な説明ができるかが大事」と指摘する。
地元の要請もあり計画を見直したのは、北海道苫小牧市と厚真町をまたぐ地域で風力発電事業を計画する大阪ガスのグループ企業「Daigas ガスアンドパワーソリューション」(大阪市)。当初10基の予定だった風車の数を5基に減らし環境負荷の低減を図るという。
一方、北海道内の太陽光と風力の発電設備容量は、2013年度から22年度にかけて、それぞれ6・3倍、2・7倍に増加している。
こうした中、旭川市は今年度、太陽光と風力の「ゾーニングマップ」を作成する。専門家の意見も踏まえて、鳥獣保護などが必要な「保全エリア」、開発しやすい「促進エリア」、その中間の「調整エリア」に分けて公表する。大部分は「保全」か「調整」エリアとなる見込みで、市環境総務課は「(計画が持ち上がった際に)スムーズに進めるため」としている。