つくばエクスプレス(TX)の運行会社、首都圏新都市鉄道(東京)が今年4月から業務内外で社員が死亡した際に支払う弔慰金の支給額を10万円から一律200万円に引き上げていたことが4日、関係者への取材で分かった。同社は理由を「福利厚生の一環」としているが、2年前には20代の社員2人が「突然死」する事案があり、これが引き上げに影響したとみられる。
産経新聞が入手した「慶弔見舞金一覧」と書かれた内部文書によれば、社員本人が業務上の理由で死亡した際に20万円、業務外の場合は10万円の支給額だった弔慰金を、4月以降は業務内外を問わず一律200万円に引き上げると明記。弔慰金は社員の家族も対象になるが、支給額の変更はなかった。
また、同社の規定では結婚や出産祝い、傷病見舞金なども社員支給されるが、いずれも変更はなく、4月からの大幅引き上げの対象は社員本人の死亡時に限り適用される。
関係者によると、令和5年1月と同年7月に駅勤務の当時24歳と21歳の男性社員が自宅で死亡しているのが見つかった。2人とも健康上の問題はなく、「突然死」とみられるという。このうち、つくば駅勤務の男性が死亡したのは宿直勤務明けの翌日だった。
鉄道事業は24時間勤務の変形労働制が基本体系となっているが、同社では平成27年、労使協定で決めた上限を超える時間外労働が常態化しているなどとして、上野労働基準監督署から是正指導を受けた。
取材に応じた現役社員は「社員本人の死亡時に限り支給額が引き上げられることに違和感がある。特に駅業務の人手不足は深刻で、是正指導後も過重労働の現状は何も変わっていない」と話す。
一方、同社の担当者は「他の企業の支給水準と照らして金額を決めた」と説明。社員の死亡が支給額引き上げに影響したかどうかについては「回答は差し控える」とコメントした。