富士山の山梨県側登山道「吉田ルート」で県が導入した入山規制について、登山者の約8割が規制を評価したことが、山小屋関係者などでつくる協議会の調査で明らかになった。県が徴収を始めた通行料について、富士山の環境保全に充ててほしいと考える登山者が多かったという。
調査は「富士山吉田口環境保全推進協議会」が2024年8~10月にウェブアンケート方式で実施。18歳以上の日本人で山小屋に宿泊した人らを対象にし、544人の有効回答があった。協議会顧問の山本清龍・東京大大学院准教授(公園計画)が集計、分析した。
県は昨年、同ルート5合目で登山者から通行料2000円を徴収し、任意の富士山保全協力金(1000円)の支払いも呼びかけた。午後4時~午前3時は、山小屋宿泊者や下山者以外の通行を制限した。
調査結果によると、規制を「とても評価する」が38%、「やや評価する」が44%に上った。通行料をどのように使ってほしいかを選ぶ質問(複数回答可)では「富士山の環境の保全」(477人)、「ごみとし尿の処理」(424人)が上位に並んだ。最も少なかったのは「お金を集める人件費」(60人)だった。
山本准教授は「登山者の多くは制度を肯定的に捉え、通行料を環境保全に使ってほしいと考えている。(県は)効率よく通行料を集めなければいけない」と指摘した。
また、入山料を値上げした場合、いくら支払えるかランダムに金額を示して質問。統計学の手法で分析すると、通行料を4000円にすれば登山者数が23%減少し、7400円で半減するという。一方、回答者の約1割は、通行料を1万8000円に値上げしても支払うと回答していた。
県は今季、同ルートの通行料を4000円に値上げ。登山者数への影響を懸念する声も上がっている。山本准教授は「現地で必要な金額を正確に把握している旅行者は少なく、理論的な数値ほど登山者が減少することはないだろう」と見込んだ。【野田樹】