懲役と禁錮を一本化して「拘禁刑」を創設する改正刑法が6月1日に施行される。刑の種類が見直されるのは、1907(明治40)年に現行刑法が制定されてから初めて。刑罰の軸足は「懲らしめ」から更生や再犯防止へと移る。
拘禁刑の導入に伴い、法務省は24種類の矯正処遇課程を新設し、受刑者の特性に合わせてグループに分類していく方針だ。
主な課程は、自立生活が困難なおおむね70歳以上の「高齢福祉」▽精神的な疾病や知的・発達障害が対象の「福祉的支援」▽薬物の使用歴がある「依存症回復処遇」――など。20歳以上26歳未満の「若年処遇」▽刑期が10年以上の「長期処遇」▽他の課程に該当しない「一般処遇」――の三つについては、更生意欲などに応じて3~4段階に細分化し、メリハリを付けた処遇を目指す。
「環境がようやく整った」。法務省の札幌矯正管区長などを務めた元キャリア職員の中島学・福山大教授(矯正処遇論)は指摘する。
中島教授によると、昭和の刑務所は20~30代の受刑者が圧倒的に多く、暴力団関係者が3割を超えた時期もあった。平成以降は若年者の減少と高齢者の増加が顕著になり、障害特性を抱えた受刑者も目立ってきたという。2023年に刑務所に入った受刑者1万4085人の中で65歳以上の受刑者の割合は14・3%。この20年で10ポイントも上昇した。精神障害や知的障害がある受刑者も全体の2割に上る。
これまでの処遇は犯罪傾向の進み具合に基づき受刑者を分類してきた。万引きを繰り返す高齢者と暴力団関係者が同じグループに分けられるケースもあった。「昭和の受刑者像を基礎とし、変化に十分に対応できていなかった。30代前後の体力がある受刑者像を設定し、力で抑えつけようとしていた」。中島教授は、刑務官による暴行などの不祥事の一因にもなっていたとみる。
法務省は認知症検査の充実や福祉専門官らとの連携も強化していく方針だ。中島教授は「受刑者一人一人に対し、社会復帰後の課題を想定しながらの処遇が求められる」と指摘する。【三上健太郎】