小池都知事「知事与党」で都議席の過半数獲得に向け精力的、野党は危機感「知事に前面に出られると…」

夏の参院選の前哨戦として注目される東京都議選(13日告示、22日投開票)。各党が気にかけるのが、都民の人気が高い小池百合子知事(72)の動向だ。精力的に立候補予定者の集会に顔を出し、新たな目玉政策を打ち出すなど存在感を放っている。(貞広慎太朗、松下聖)

5月17日の昼前、小池知事が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」の荒木千陽都議(43)の事務所開きが中野区内で開かれた。小池氏は50人超の支持者の前でマイクを握ると、育児に奮闘する荒木氏に言及し、「(子ども政策で)こんなことが足りない、あんなことがあったらいいと、私にびしばし言ってくれる」と持ち上げた。この日は、八王子市と多摩市で行われた都ファの集会にも駆けつけ、エールを送った。
小池氏は2021年の前回都議選時、コロナ禍への対応で多忙を極め、告示直前に過労で入院。党の顔を欠いた都ファは、小池氏と一定の距離を置いていた自民党に都議会第1党の座を明け渡した。荒木氏は「『候補を勝たせたい』という知事の強い気持ちを感じる。知事が応援に入れば現場の士気が上がる」と歓迎する。

「チームで勝つことが重要よ」。都ファ関係者によると、小池氏は5月の大型連休前、都議選の戦略についてそう強調したという。
「チーム」とは自民、都ファ、公明の3党を指す。都ファと公明に加え、自民も昨年の都知事選で小池氏支援に回っており、3党は現在、都議会の「知事与党」と呼ばれる。3党の議席数は計79議席と定数(127)の過半数を占め、小池都政を支える。
小池氏は5月16日の記者会見でも、「都政に協力いただき、東京大改革を進めてくれる方々を応援する」と都議選への積極関与を明言した。都ファ関係者は「知事の支持勢力が過半数の議席を取れるように、手を打つということだ」と解説する。
実際、小池氏が3党への配慮を見せた場面があった。今夏4か月間の水道基本料金を無償化する方針を先月発表した際、前日に3党から無償化の緊急要望を受ける場を設けた。要望を政策に反映させたとの演出で、3党に花を持たせた。
自民は、派閥に続いて都議会会派で発覚した政治資金パーティー収入の不記載問題への逆風がなお強い。ある自民都議は「我々にとって、知事に近いことをアピールできるメリットは大きい。選挙での応援も頼みたいと考えている」と明かす。

野党側は小池氏の動きに警戒を強める。
読売新聞社が5月16~18日、都内有権者を対象に実施した都議選情勢調査によると、小池氏の支持率は55%だった。支持政党別でみると、無党派層の5割超、立憲民主党の支持層も5割近くが支持した。
共産党の都議は「自分たちの政策を訴えて戦うだけだ。知事と3党をひとくくりに批判していく」と強気だが、立民都議は「知事に前面に出られると、他党に票が流れかねない」と危機感をあらわにする。

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