「7月に日本で大地震」うわさ拡散で香港便減便相次ぐ…漫画の記述が元、宮城県知事「ゆゆしき問題」

香港で「7月に日本で大地震が起こる」とのうわさが拡散して日本への旅行を控える動きにつながり、日本各地の空港で香港便の減便が相次いでいる。うわさに科学的な根拠はなく、気象庁は「該当時期に災害の予兆はない」として冷静な対応を呼びかけている。(鳥取支局 山内浩平)
5月29日、米子空港(鳥取県境港市)の国際線到着ロビーから出てくる香港からの訪日客はまばらだった。
香港からの便に乗っていた女性(36)は「うわさ通りになる前に、日本に行こうと思った」と話した。
うわさの元になったのは、1999年に出版された日本の漫画「私が見た未来」。表紙に「大災害は2011年3月」との記述があり、同月に東日本大震災が発生したことで注目を集めた。
香港の著名な風水師らが、漫画の「完全版」に「本当の大災難は2025年7月にやってくる」とする内容があることを取り上げ、今年になってSNSや動画サイトで急速に拡散した。
政府は1月、南海トラフ地震の今後30年の発生確率を「70~80%」から「80%程度」に引き上げた。3月に新たな被害想定をまとめた報告書が公表されたことも影響しているとみられる。
香港と成田、関西、仙台、徳島、米子の5路線を運航する香港の格安航空会社「グレーターベイ航空」は5月、仙台との定期便を週4便から2便に減便。徳島との定期便も週3便から2便に減らした。
宮城県の村井嘉浩知事は4月23日の記者会見で、「SNSで広がった非科学的な根拠が、観光面で影響がでるのはゆゆしき問題だ」と述べた。香港の旅行会社にヒアリングした徳島県観光誘客課によると、安全への懸念から日本への旅行のキャンセルが相次いでいるという。
鳥取県は5月27日、グレーターベイ航空と、減便を踏まえた協議を行っていると明かした。「うわさの影響で予約が伸び悩んでいる」との説明があったという。米子―香港間は現在、週3往復。4月の中下旬に85%あった搭乗率は、5月は50%を下回る見通しだ。
平井伸治知事は「日本への旅の動機が失われている。影響は避けられない」と困惑している。

気象庁は、日時と場所を特定した地震の予知はできないとしている。野村竜一長官は5月21日の記者会見で「日時を指定した災害情報に振り回されないでほしい。不安に駆られて不合理な行動を取らないよう強く申し上げたい」と述べた。
漫画の作者・たつき諒氏は出版社を通じ、「関心をお寄せいただいていることは、防災意識が高まっている証拠で、前向きに捉えている」などとコメントした。

東京大の関谷直也教授(災害情報)の話「地震発生に関する予言は科学的根拠がなく、7月に地震が起きたとしても、偶然にすぎない。予言やうわさを信じるのは良くないが、地震はいつか、どこかで起きるという前提で備えをすることが重要だ」

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