政府の成長戦略「新しい資本主義実行計画」案の全容が5日、判明した。実質賃金の年1%程度の上昇定着を目指し、国や自治体による企業などへの発注で物価に合わせた価格の引き上げを徹底するほか、医療や介護など公定価格の引き上げを進め、賃上げに取り組む姿勢を示した。官民による国内投資を2040年度に200兆円とする目標も明記し、民間企業の「稼ぐ力」の向上を後押しする。
実行計画は22年に初めて策定され、石破内閣では最初の改定となる。6月中旬に閣議決定する。
計画案では、物価上昇を踏まえ、国が「賃上げと価格転嫁の先導役」になると強調した。地域経済への影響が大きい公共事業や業務委託などを巡り、物価上昇に合わせた価格転嫁の徹底を進める。
公的に価格が決まる医療や介護などの分野でも「コストカット型からの転換を明確に図る必要がある」と指摘し、診療報酬や介護報酬などの見直しを図る。政府はこうした取り組みを重ね、29年度までの5年間で名目賃金から物価上昇の影響を差し引いた実質賃金の年1%程度の上昇定着を図りたい考えだ。
また、賃上げと投資拡大による成長型の経済への転換も打ち出した。23年度の民間企業設備投資額は約102兆円で、官民により30年度に135兆円、40年度に200兆円への拡大を目指す。
中小企業の成長に重点を置き、〈1〉ヘルスケア〈2〉防災〈3〉農林水産業――などを重点分野に定め、研究開発や輸出拡大を支援する。公的年金の積立金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)の運用方針を検証し、株式など伝統的な金融資産ではなく、国内の起業投資会社などへの「オルタナティブ(代替)投資」を推進する。
最低賃金に関しては、20年代に全国平均1500円に引き上げる目標に向け、「たゆまぬ努力を継続する」とした。