ウイルスを持ったマダニを介して感染する感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」のネコを治療していた三重県の獣医師の男性が、この病気に感染して死亡したことを巡り、男性獣医師は死亡の数日前、「胸が苦しい、息苦しい」などと家族に訴え、近隣の病院に緊急搬送されていたことが、県獣医師会への取材で分かった。
県獣医師会によると、亡くなった獣医師は高齢の男性。ゴールデンウィーク(GW)終盤の5月6日ごろ、妻に胸や呼吸の苦しさを訴え、近くの病院に緊急搬送されたという。その後、入院して治療を受ける中で、SFTS感染が判明。容態が悪化し、5月12日に亡くなった。
男性獣医師は県内で動物病院を経営する開業医で、院長を務めていた。発症前にはSFTSに感染して入院していたネコの治療にあたっていたことが分かっている。
県獣医師会では、獣医師がこのネコを通してSFTSに感染したかは分からないとした上で、「ウイルスを持つマダニからだけでなく、感染したネコやイヌなどからも唾液や尿、血液などを通してヒトに感染することがある」と分析している。
このネコの飼い主については、すでに県保健所が聞き取り調査を行っているといい、現時点で感染の可能性はほぼないと見られている。県獣医師会は獣医師の死亡を受け、会員の動物病院に感染予防の徹底を呼び掛けた。また、一般家庭に対しては、マダニは主に屋外に生息していることから「室内飼いが望ましい」と呼び掛けている。
SFTSは、ウイルスを持つマダニなどが媒介する感染症。国立健康危機管理研究機構によると、発熱や嘔吐、下痢のほか、意識障害や失語などの神経症状、皮下出血や下血などの出血症状などが現れる。致死率は6・3~30%と高い。治療は対症的な方法しかなく、有効な薬やワクチンはない。感染から6~14日の潜伏期を経て発症するという。
SFTSを巡っては、今月7日、香川県三豊市で感染した60代女性が死亡。鳥取市内でも感染した80代男性が重症となるなど、西日本を中心に感染の報告が相次いでいる。