「看過できない」「危機感」 高騰する東京23区の火葬料、都議選の隠れた争点に

選挙戦が終盤を迎える東京都議選(22日投開票)では、高騰する23区の火葬料金の問題も隠れた争点になっている。共産党が政策集に「火葬料の引き下げ」を明記したほか、国民民主党の一部候補者は火葬業への外資参入に対する危機感を交流サイト(SNS)で表明。共産以外の主な党も産経新聞の取材に対策の必要性を指摘した。(原川貴郎)
「最期」まで
「火葬料金は高騰し、葬儀業者による詐欺的な価格設定も横行」「火葬や葬儀分野に中国資本を含む外資が関心を示し始めている現実も見逃せません」「日本人の『最期の瞬間』まで外資に委ねることになるかもしれない」
都議選に立候補した国民民主のある新人は告示直前、X(旧ツイッター)にこう書き込んだ。選挙戦期間中も都内の火葬場を巡る状況について「経済安全保障の観点からもかなり危機感」があると表明した。
東京23区内に火葬場は9カ所ある。全部で7カ所ある民営のうち、6カ所は「東京博善」が運営している。新人の投稿は同社が中国資本が入った企業の傘下にあることを念頭に置いたものとみられる。
東京博善の火葬料は以前は5万9000円だったが、令和3年以降、相次いで引き上げられ、現在は9万円となった。
公営の2カ所の火葬料は臨海斎場(大田区)が4万4千円(区民)、都立瑞江葬儀所(江戸川区)が5万9600円(都民)。それぞれ東京博善と3万円以上の料金格差がある。
全国1364カ所の火葬場(令和5年度)は、ほとんどが自治体による運営で、一般的な火葬料は無料か1万~2万円程度。都内でも立川市や昭島市など23区外の多摩地区の多くは住民であれば無料で、23区内の火葬料は公営、民営にかかわらず高額だといえる。
問題意識
都議会で所属議員が「東京23区での高額な火葬料が社会問題になっている」と提起した共産は、都議選の政策集に「都立火葬場の新設と火葬料の引き下げを進め、火葬のあり方に関する検討会を設置し火葬料の基準を示す」と対策を明記した。
参政党は都議選重点政策の一つに、火葬場を含むインフラの民営化への反対を掲げた。
自民党、公明党、立憲民主党などは会派所属議員が昨年来、都議会の質疑で取り上げており、産経新聞が行ったアンケート取材に対し、どの党も強い問題意識を示した。
東京23区の火葬料・火葬場の現状を巡っては、自民が「民営火葬場7カ所のうち6カ所を特定企業が運営しているため寡占状態にあり、相次ぐ値上げにより都民の負担が大きくなっている」と回答した。
「届け出制」
日本維新の会は「火葬料が高騰している現状は、都民の生活に深刻な影響を与えており看過できない」と問題視する。公明も「一部事業者が急激な値上げを行い、多くの都民が不利益を被っている」と指摘した上で「火葬料には法的根拠がないため、今後さらに高額になるのではないか」との懸念を示した。
今後の対策として、複数の党が火葬料の適正化・透明化のための「届け出制」の導入を主張している。既存施設の稼働率向上や新設備の整備などのほか、「国民健康保険、後期高齢者医療制度における葬祭費支給額引き上げ検討」(立民)といった提案もあった。

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