能登の仮設住宅での孤独死10人、発見までに4~7日が3人も…識者「社会参加・就労支援を」

昨年の能登半島地震と豪雨後、石川県内の応急仮設住宅で「孤独死」した住民が少なくとも10人に上ることが、県警への取材でわかった。行政は独居や高齢者の室内に緊急時の通報システムを設置するなど見守り活動に力を入れるが、識者は「被災者にとって突然の生活環境の変化が孤立を招く。社会参加を促す支援も必要だ」と指摘する。(金沢支局 武山克彦、写真も)
知人後悔「我慢強い人だった」

輪島市の仮設住宅で今年1月、独り暮らしの80歳代女性が遺体で見つかった。かつて自営業で生計を立てた女性は店舗をボランティアに貸し、復興の力にもなろうとしていた。病院を受診した後に連絡が取れなくなったといい、知人は「我慢強い人だった。何かできることはなかったか……」と悔しさをにじませる。
県警によると、今年5月までに仮設住宅内で誰にもみとられず死亡したのは40~80歳代の男性4人、女性6人でいずれも病死だった。亡くなったとみられる日から発見までの日数は「1日以内」が6人、「4~7日」が3人、「2~3日」が1人だった。
県内の仮設住宅には20日時点で、計6816世帯1万3975人が入居している。孤独死を防ぐため、輪島市は人の動きを感知するセンサーを設置し、一定時間動きがない場合、24時間対応のコールセンターに通報されるシステムを導入した。継続的に巡回している県警は、行政の支援が必要と判断すると、関係機関へ連絡している。輪島、能登の2市町周辺では青年海外協力協会(JOCA)が戸別訪問などに取り組む。
ただ、穴水町で見守り活動を進めるNPO法人「レスキューストックヤード」の栗田暢之代表理事は「独り暮らしの男性からは戸別訪問を拒否されることがあり、何度も通い理解を得ている」と話し、孤立を防ぐのは容易ではないという。
熊本県によると、2016年の熊本地震後、仮設住宅や災害公営住宅で亡くなった独り暮らしの住民は22年3月末時点で計33人。この先、石川県で災害公営住宅が整備された後も、孤独死は増える懸念がある。
被災地での孤独死問題に詳しい追手門学院大の田中正人教授(災害復興)によると、仮設住宅や災害公営住宅への入居に伴う環境の変化や仕事を失った際などに孤立のリスクが高まる。田中教授は「若年層でも孤独死はある。見守り活動や交流イベントには限界があり、精神疾患に対するケアとともに、就労支援なども重要だ」と語る。

シェアする

フォローする