機械メーカー「大川原化工機」のえん罪事件で、警視庁は検証報告書を公表し、警視総監が謝罪しました。一方、会社側は7日夕方の会見で、「事実レベルの検証が物足りない」と批判しました。
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大川原化工機 大川原正明社長
「あまりにも簡単に逮捕に踏み切ることに対して、どうしても突っ込んでなかった」
大川原化工機 島田順司元役員
「事実解明が不十分だなと。誰が実際にどうしたのか、ほとんど解明されていない」
えん罪事件の被害者、大川原化工機の大川原正明社長と島田順司元役員らが警視庁と最高検察庁が7日、検証結果を公表したことを受け会見に臨みました。
大川原化工機 大川原正明社長
「警察官それから検察官自身の心の持ち方、考え方のところ、変えるような形にしないと」
2017年、警視庁公安部外事一課は、大川原化工機の社長らが軍事転用可能な機械を不正に輸出した疑いがあるとして、捜査を開始。2020年、社長ら3人は逮捕され、東京地検に起訴されました。
勾留期間は1年近くに及び、2021年には一転して、東京地検が犯罪にあたるかどうか疑いが生じたとして、起訴を取り消しました。
その後、捜査は違法として国・都に賠償を求めて提訴し、ことし6月、およそ1億6600万円の賠償を命じる判決が確定しました。
任意聴取を含む取り調べや逮捕後の勾留は長期間に及び、元顧問の相嶋静夫さんはこの期間に亡くなりました。
相嶋さんの遺族
「深く反省し、再び真の警察、検察として国民の信頼を得られることを望んでいます」
7日、警視庁トップの警視総監が異例の謝罪をしました。
警視庁 迫田裕治警視総監
「本件捜査によって多大なご心労ご負担をおかけしたことについて、深くおわび申し上げます」
現在は退職している元警視と元警部の減給処分相当や、退職した元公安部長の訓戒相当など、あわせて19人の処分も発表しました。
なぜ、このようなえん罪事件が起きたのか…
警視庁 迫田裕治警視総監
「公安部全体の捜査指揮系統の機能不全が、最大の反省事項だったと考えております」
公安部は情報保全を徹底しなければならない業務の性質があり、事件検挙を第一に、捜査上の消極要因に、十分に注意が払われていなかったことなどから逮捕につながったといいます。
今回の検証結果について大川原化工機は…
大川原化工機 島田順司元役員
「強化・徹底・向上・充実とかいう当たり前の言葉が並ぶだけで、もっと具体的な再発防止策を期待してました」
警視庁側の報告書について「事実レベルの検証が物足りない」と指摘し、「無理な解釈を立ち上げて逮捕したことが最大の問題だ」などと批判の声もあがりました。
大川原化工機 大川原正明社長
「とにかく逮捕するということは本当に慎重に、いろんなところでお話ししていきたいなと」
再発防止に向け、情報の保全と風通しの良さを両立させる難しい改革が求められます。
(8月7日放送『news zero』より)