天皇、皇后両陛下は12日から長崎県を訪問される。今年は沖縄や広島を巡り、モンゴルでも抑留中に亡くなった人々を追悼された。被爆者らが高齢となる中、沖縄に続いて長女愛子さまを伴い、戦後80年にあたり戦没者を慰霊する地方訪問を締めくくられる。(坂場香織)
両陛下での長崎訪問は1996年以来29年ぶり。愛子さまの訪問は初めて。
天皇陛下は2月の記者会見で「広島や長崎での原爆投下、各都市での空襲、沖縄における地上戦、硫黄島などで多くの尊い命が失われました」と述べ、今年は改めて戦中・戦後の苦難を経験した人々に心を寄せていきたいと語られた。
両陛下は4月、太平洋戦争の激戦地・硫黄島(東京都小笠原村)を訪れ、6月には沖縄、広島に足を運ばれた。7月には国際親善で訪れたモンゴルで、抑留中に死亡した日本人の慰霊碑に供花し、黙とうされた。
行く先々で両陛下が大切にされてきたのが、戦争の記憶を伝承する体験者や、「語り部」として活動する若者らとの対面だった。
陛下は先月15日の全国戦没者追悼式のお言葉に、「戦中・戦後の苦難を今後とも語り継ぎ」との一節を加え、戦禍の記憶の継承に対する強い思いを示された。
2月の記者会見では、「愛子にも、苦難の道を歩まれた方々に心を寄せていってもらいたい」と述べられていた。側近によると、両陛下は愛子さまを含む次の世代の一人ひとりに平和の大切さを感じてほしいと願われているという。
ご一家は12日午後、特別機で長崎入りし、長崎市の平和公園内の原爆落下中心地碑に供花した後、被爆者や伝承者と懇談される。日本原水爆被害者団体協議会(被団協)代表委員の田中重光さん(84)が出席する予定になっている。
13日は、同市の「恵の丘長崎原爆ホーム」で入所者と懇談した後、愛子さまがお一人で帰京される。両陛下は、障害者による絵画や切り絵の展示を視察される。14日は、佐世保市で第40回国民文化祭と第25回全国障害者芸術・文化祭の開会式に出席し、帰京される。