イグ・ノーベル賞「ウシにシマウマ模様塗ったら虫つかず」…児嶋朋貴さんら研究チーム「生物学賞」

【ボストン=中根圭一】人々を笑わせ、考えさせる優れた研究を顕彰するイグ・ノーベル賞の授賞式が18日(日本時間19日)、米ボストン大で開かれた。今年は黒いウシにシマウマ模様を付けて「シマウシ」にするとアブなどの吸血昆虫をよける効果があることを発見した日本の研究チームが「生物学賞」を受賞した。
受賞したのは、農業・食品産業技術総合研究機構の児嶋朋貴・任期付研究員(41)らのチーム。イグ・ノーベル賞はノーベル賞のパロディー版で、1991年に創設され、米科学誌が主催している。日本の研究者の受賞は19年連続となる。
児嶋さんは、愛知県農業総合試験場に在籍していた2016年頃、ウシの飼育農家からアブやサシバエなどの吸血昆虫に悩んでいるとの話を聞いた。ウシが虫に刺されると、虫が媒介する伝染病への感染リスクが高まるほか、痛みやかゆみでストレスをためて餌を食べる量や乳量が減り、成長が悪くなることがある。
「シマウマはしま模様があるおかげで虫に刺されにくい」という海外の論文を読み、本格的に実験を開始したのは17年から。白いスプレーでシマウマ模様を付けたウシ、黒いスプレーでしま模様を付けたウシ、通常のウシの3頭を用意し、どのウシに虫が付きやすいかを調べた。柵につないで30分後に虫を数えたところ、通常のウシには128匹、黒いしま模様のウシには111匹付いていたが、シマウマ模様のウシは55匹と他の半分ほどで、虫が近づきにくくなっていた。
この日の授賞式には、同じチームの大石風人・京都大准教授(48)と佐藤精・愛知県畜産総合センター酪農課長(57)も出席した。児嶋さんは研究内容の発表中、上着を脱いでシマウマ柄のシャツ姿に変身し、会場を盛り上げた。式後、「私が賞を取れるなんて現実とは思えない。私たちの研究を通じて、『科学は面白い』と思う人が増えたらうれしい」と喜びを語った。
今回の研究が実用化されれば、環境への負荷が大きい殺虫剤をまかなくても家畜の感染症を予防できる可能性が出てくるという。

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