「テレビや新聞ではほぼ報じられず…」学歴詐称の田久保市長と小池都知事…“卒業証書チラ見せ”とカイロ大疑惑の“深い共通点”

伊東市の田久保真紀市長の振る舞いを見ていると2人の首長を思い出す。東京都の小池百合子知事と兵庫県の斎藤元彦知事である。もしかしてこの2人から学んでないか?とすら思える。
学歴詐称疑惑、小池知事の振る舞いは?
田久保市長は学歴詐称の疑いが指摘され、市議会で不信任の議決を受けた。すると市長は市議会を解散した。10月19日に市議会議員選挙が行われる。田久保市長は実際には大学を除籍となっていたにも関わらず、市の広報誌に「東洋大学法学部卒業」と記載した。
その上で比較してみよう。学歴詐称疑惑で思い出されるのが小池百合子氏だ。以前から疑惑が指摘されていたが、昨年には元側近の告発があった。
『「私は学歴詐称工作に加担してしまった」小池百合子都知事 元側近の爆弾告発 小島敏郎』(文藝春秋2024年5月号)
小池知事の大学卒業を認めるカイロ大学学長名の2020年の声明文を巡り、知事の元側近の小島敏郎氏が、声明文は知事側で作成した可能性があると告発。小島氏は知事から相談を受け「カイロ大から、声明文を出してもらえばいいのではないですか」と対策を提案したという。
衝撃的な告発だったがテレビや新聞ではほぼ報じられなかった。なぜなのか? 当時の「民放の報道番組スタッフ」コメントがわかりやすい。
《小島氏の手記を一読した時は『小池知事はここまでやるのか』と驚きました。しかし誰が文案を作成したにせよ、知事の卒業を今もエジプト大使館とカイロ大が認めている以上、疑義を挟む小島氏の告発に乗るわけにはいかない。(略)慎重に扱わざるを得ないのです》(『元側近の「爆弾告発」主要メディア黙殺のナゼ』日刊ゲンダイ2024年4月15日)
あの声明文作成の「プロセス」が明かされたから読者は驚いたのだが、エジプト大使館とカイロ大が認めているという「結果」は変わっていない。小池都知事にとっては心強い結果だ。しかしそうなると気になることもある。「疑惑のカイロ大声明」によって再選を果たした小池氏は「二期目に入るやエジプト関連予算を一気に増額させている」という事実もあった(「週刊文春」2024年4月25日号)。これにはどんな意味があるのか。
自民党や都連への借りが都政に影響している可能性も
元側近・小島氏の告発に戻すと、小池氏は学歴詐称問題における都議会対策で、
《自民党の二階さんや都連には大きな借りができた。その結果、自民党寄りに変節していったのでしょう。》
借りをつくったことが都政に影響している可能性も指摘していた。
念のために今回の田久保市長との違いを書いておくと、小池氏は大学側が卒業を認めており、卒業証書を公開している。田久保市長は卒業証書をチラ見せしたことが話題になった。除籍なら卒業証書は存在していないはずだ。これら一連の説明が曖昧なのである。
こうしてみると田久保氏が小池氏と似ているのは学歴詐称疑惑そのものではなく、説明する態度だ。小池氏は告発報道後に3期目を目指して東京都知事選に出馬した。しかしなかなか街頭に出てこなかった。理由には「公務」を挙げていた。では都知事選時の公務とはどんなものだったのか?
《公務は都庁に籠もるだけでなく、現場視察に重点を置く。同行するメディアを通じて、2期8年の実績や今後取り組みたい施策をアピールする狙いが透けて見える。》(読売新聞2024年6月24日)
なるほどこの手法なら小池氏にとって厄介なフリー記者に質問されないだけでなく、街頭演説をしなくても露出が増える。老獪な手法だった。田久保市長はこうした小池氏ののらりくらりした「戦法」を参考にした可能性はないか。ただ田久保氏はフリー記者以外からもツッコミの嵐なのだが……。
続いて田久保氏と兵庫県の斎藤元彦知事の比較をしよう。
《議会解散後も、田久保氏は報道陣の取材に「改革への灯は消してはならない」として「改革者」をアピール。SNS上では「既得権益に挑戦している」と支持する声もある。》(東京新聞9月18日)
田久保氏はメガソーラー建設計画の白紙撤回や新図書館計画中止といった訴えをしてきた。なのでSNSでは「利権につぶされた」という声もあるという。これは兵庫県知事選を思い出す。パワハラ疑惑や内部告発問題に問われながら、出直し選挙で再選を果たした斎藤氏には、「既得権益に切り込みワナにはめられた」との「陰謀論」を信じる支持者の存在が指摘されている(東京新聞8月2日)。既得権益と戦っている人なのに!という支援者の評価が似ていないか?
田久保市長と斎藤知事の最大の共通点は…
ちなみに不信任決議を受けた斎藤元彦兵庫県知事は解散ではなく失職を選び、知事選が行われた。この点は田久保氏と異なる。田久保氏の手法は、前・岸和田市長が自身の女性問題で不信任決議を受け、議会を解散させたのと同じだ。
では田久保市長と斎藤知事の最大の共通点と思えることを挙げたい。田久保氏の学歴疑惑は全市議に送られた匿名の文書で発覚したが、田久保氏は当初「怪文書には対処しない」と一蹴した。斎藤知事も自身に関するパワハラなど7項目の疑惑を指摘した内部告発について「うそ八百」と発言した。斎藤氏は告発を公益通報として扱わず、県幹部に調査を命じて元幹部を特定して懲戒処分にした。告発文書を怪文書扱いされた元県幹部はそのあと死亡した。自死とみられている。
いかがだろうか。権力を持つ側が自身の不都合な情報に対して潰しにかかった点がそっくりなのだ。首長が議会や百条委の判断を尊重しない事態も似ている。そのあと何があっても「真摯に受け止める」などの言葉で乗り切ろうとした斎藤知事の態度からも田久保氏は大いに学んでいないだろうか。
田久保市長を見ていて東京都知事や兵庫県知事の言動をあらためて思い出した。各地で似たような人が出てくるのもどこかわかるような。
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(プチ鹿島)

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