旧安倍派の会計責任者「還流再開を要望したのは下村博文氏」、大野被告公判で証言…下村氏は「事実全くない」

自民党派閥の政治資金パーティーを巡る事件で、政治資金規正法違反(虚偽記入)に問われた前参院議員・大野泰正被告(66)らの公判が25日、東京地裁(福家康史裁判長)であった。旧安倍派の松本淳一郎・元会計責任者(78)(有罪確定)が証人出廷し、同派から議員側へのパーティー収入の還流を再開するよう要望したのは下村博文・元文部科学相(71)だったと認めた。
同派では、パーティー収入のノルマ超過分を派閥から議員側に還流するなどし、派閥・議員側の双方が政治資金収支報告書に記載しない運用が続いていた。2022年4月に派閥会長だった安倍晋三・元首相の意向で中止が決まったが、同8月の幹部協議後に再開された経緯がある。
この日の公判で松本氏は、還流再開の経緯について、大野被告の弁護人の質問に答える形で説明した。「下村氏から議員にお金を返してあげてほしいと言われたか」と問われた松本氏は「はい」と述べた。「『(再開を)安倍氏が了承した』と下村氏から言われたか」との質問にも、「そうですね」と答えた。
その上で松本氏は、幹部協議で、下村氏が池田佳隆・前衆院議員(59)(政治資金規正法違反で起訴)への還流を要望したとし、再開が決まったとの認識を示した。
自身の公判で松本氏は、還流再開を要望した人物について「ある幹部」と述べるにとどめ、名前を明かしていなかった。
下村氏は今年5月、参考人として招致された衆院予算委員会で、還流再開を求める議員がいることを松本氏と安倍元首相に報告したとし、安倍元首相は「そうですか」と答えたが、それ以上のコメントはなかったと説明。その上で、「再開を求めるということではなかった」と述べていた。
下村氏は25日、自身のX(旧ツイッター)に、還流再開を要望した事実は全くないと投稿。「ノルマ超過分の還付(還流)を受けられないかとの声を松本氏に報告したが、還付再開を指示・決定する立場ではありませんでした」などと記した。
一方、松本氏はこの日、議員側に還流した資金について「政治活動や選挙に使ってもらいたかった」と語った。ノルマ超過分の還流を希望する議員が「結構な数いた」とし、大野被告についても「いた気がする」と述べた。
起訴状では、大野被告と元秘書の岩田佳子被告(62)が共謀し、18~22年に同派から受け取った計約5100万円を大野被告の資金管理団体の収支報告書に記載しなかったとしている。両被告は無罪を主張している。

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