高市首相は新内閣発足に併せて首相官邸の主要幹部を一新した。自ら起用した幹部と一体感を醸成し、官邸一丸で政治課題に取り組むためだ。長期政権を築いた安倍晋三元首相の配置方法を踏襲した面もある。
最大の「サプライズ」は、外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障局長人事だ。白羽の矢が立ったのは市川恵一・前官房副長官補で、今月10日にインドネシア大使とする人事が閣議決定されていたが、これを覆した。首相周辺は「適任と見なしたら多少、強引でも起用する。これが高市流」と解説する。
外務省出身の市川氏は、安倍氏が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」など外交戦略の起草にも加わった経験がある。安倍氏の外交・安全保障政策を継承する首相にとっては、うってつけの人材だ。前任となる岡野正敬氏は就任からわずか9か月で異例の交代となる。
安倍氏を踏襲した部分は、警察庁出身の官房副長官(事務)と経済産業省出身の首相秘書官(政務)という陣容にも表れている。安倍内閣では、警察庁出身の杉田和博氏と経済産業省出身の今井尚哉氏が、それぞれ官房副長官と首相秘書官として連携し官邸事務方を取り仕切った。「警察官僚が危機管理を担う『守り』、経産官僚が政策を打ち出す『攻め』の役割」(官邸関係者)だという。
首相は今回、官房副長官に露木康浩・前警察庁長官、首相秘書官に飯田祐二・前経産次官を充てる。石破内閣では総務、防衛両省出身者のコンビだった。
首相はこのほか、国家安全保障担当の首相補佐官に航空自衛隊補給本部長を務めた尾上定正氏を民間から登用する。安倍氏が自衛隊幹部をたびたび官邸に呼び、助言を求めるなど「制服組」を重用していたことが念頭にあるようだ。