クマ引き寄せる「71%」は…身近な果物 専門家「管理できていない木は伐採を」 ゴミ荒らし防ぐ“最終兵器”【なるほどッ!】

全国各地でクマによる被害が後を絶ちません。北海道ではゴミステーションが川に落ち、富山市や秋田市では木の上までクマが登って実を食べていました。クマを引き寄せるモノのうち、71%と圧倒的に多かった果物は何でしょうか? 有効な対策を考えます。
森圭介アナウンサー
「今年度のクマによる死者数は22日時点で9人と、過去最多となりました。この日も全国各地でクマによる被害が相次いでいます」
「福島・会津美里町では80代の夫婦が体長1メートルほどのクマに襲われ、けがをしました。秋田・横手市では市街地にクマが居座り、秋田県で初めて緊急銃猟が行われました」
森アナウンサー
「人が襲われる被害に加えて、モノへの被害も確認されています。北海道・知内町では20日、ゴミなどを置いておくゴミステーションが小川に落とされていました。クマに押されたのか、後方にある川の方へ落ちていたということです」
鈴江奈々アナウンサー
「逆さまになっていますね」
森アナウンサー
「近くにはクマが歩いた跡が見つかったということで、警察はクマがこのゴミステーションを荒らしたとみています」
鈴江アナウンサー
「生ごみなどのにおいを嗅ぎつけてきたのかもしれないですね」
森アナウンサー
「可能性はありますよね。人間にはゴミは不要なものですが、クマとすれば、食べられる部分が残っていればエサにつながるという可能性はもちろんありますからね。とは言えゴミは捨てなくてはいけません。ゴミステーションは対策上、非常に重要になってきますね」
忽滑谷こころアナウンサー
「なかなか個人でゴミを固く縛るなども限界があると思いますし、この対策は難しいですよね」
森アナウンサー
「ゴミステーションに呼び寄せられてしまったという可能性も考えられますが、クマがゴミステーションを荒らすのを防ぐという“秘密兵器”があるということです。動物園で行われた実験映像があります」
「ヒグマが水色の箱を押しています。こんなに強い力で押したら、ゴミステーションもひとたまりもないという感じが分かると思います。この箱の中にはクマの好物のサケが入っています。このヒグマが仁王立ちになって倒そうとしていますが、なかなか倒れません」
森アナウンサー
「この箱の名前は『とれんベア』で、北海道の廃棄物処理をしている会社が製造しています。ただのゴミステーションではなく、鉄製で板の厚さが約2ミリ。表面が平らになっているのでクマの爪が引っかかりにくく、ゴミを荒らしにくい構造になっています」
山﨑誠アナウンサー
「ゴミ置き場からクマがゴミを荒らして食べ物を得てしまうと、そこに食べ物があると思ってしまうじゃないですか。こうして、そもそも食べ物が取れないよと思ってもらうしかないわけですよね」
森アナウンサー
「実際に、北海道や栃木県ですでに10台以上設置されています。重さは、コンクリートの土台も含めて約1トンあります」
「22日、every.はこれが使われている栃木・那須塩原市を取材。地域の鳥獣対策をされている中塩原鳥獣対策協議会の君島陽一さんに聞きました。この地域では、月に数回クマの目撃があったそうですが、これを設置してから目撃されなくなったということです」
「ある程度の効果が出てきたと期待してもいいかもしれませんね」
直川貴博アナウンサー
「有効ですよね。経費もかかるだろうなとは想像しますが、命には代えられません」
森アナウンサー
「クマが何におびき寄せられるのかが分かれば、そこの対策をすることで非常に効果が出てきます」
森アナウンサー
「ゴミの他にも、クマを呼び寄せるものがあります。一体何にクマが呼び寄せられて、人里に降りてきているのかが分かるグラフ(令和7年度第1回クマ被害対策等に関する関係省庁連絡会議より、兵庫県立大・横山真弓教授の資料をもとに作成)があります」
「1位は圧倒的で71%が柿でした。そして栗(7%)、梨(3%)、ブドウ(2%)など秋に収穫される果物が続きます。ゴミ(コンポスト等、2%)など他のモノも含まれている中での数字です」
「9月、環境省でクマ被害対策の会議が開かれて示されたものです。最近も、クマが柿を食べるために人里に降りてきている姿が各地で目撃されています」
「21日夜、富山市で撮影された映像があります。オレンジ色の柿がなっているのが分かります。クマが木の上で夢中になって、柿の実を食べています。下から取るだけでなく、登っています。枝は決して太くはないですが、登るクマが確認できています」
森アナウンサー
「秋田市では19日、親子グマとみられる4頭が住宅街にある柿の木に集まって実を食べていました。実に興味を示して、登って食べています。柿は1つの木に対してかなり実を大量につけるので、餌場になってしまっているのかもしれません」
「環境省や専門家などは、住宅の庭などにはえている柿の木や、過疎地や山の近くで管理されていない柿の木が、クマを人里に引き寄せている要因になっているケースもあると指摘しています」
森アナウンサー
「クマの保護管理に詳しい兵庫県立大学の横山教授は『管理ができていない柿の木は、切ったほうがいいと』と話しています」
「庭にある柿なら管理が行き届いていますが、例えば人がいなくなった山間部や人口減でできた空き家近くにある柿の木など、誰も管理をしていないとそのまま実がなり、あるいは実が落ちて、腐って臭いを発するということもあるかもしれませんね」
「こういった管理ができていない柿の木は、クマを呼び寄せる原因になるということです」
直川アナウンサー
「田舎ならその範囲が広いだけに、所有物になっているのかな、どこまで誰が手を出していいのか、という違った問題も出てきます」
鈴江アナウンサー
「私有地だと難しいですよね」
森アナウンサー
「伐採には費用もかかり、柿の木を伐採する費用を支援している自治体もあります。栃木・佐野市では、柿などの果樹を伐採するための補助金制度を今年度から導入。上限額は5万円で、業者に依頼した費用の3分の2が補助され、すでに3件の申請がありました」
「佐野市によると、管理されていない木だと、収穫されていない柿の実を求めてクマが出てきます。その集落に食べ物があるとクマが食べに来て、木の部分だけではなく集落全体がエサ場だと認識されてしまうので、まずは呼び寄せないということが非常に重要です」
「自分たちが食べるために柿の木を持っていらっしゃる方がいると思います。食用としている木には、クマが登らないように幹にトタンを巻くなど適切に管理して、人が管理をしていない木に関しては伐採するというのが今後必要になってくるのかもしれません」
「クマの被害は非常に多くなっています。そのクマを呼び寄せるのが柿ということまで分かっていますので、ぜひ対策をしていただきたいと思います」
(10月22日『news every.』より)

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