【解説】「人身取引」国内で増加のワケ…去年保護された被害者66人、日本人は58人

12歳のタイ国籍の少女を個室リラクセーション店で違法に働かせたとして、経営者の男ら2人が逮捕されました。少女は母親に「人身取引」目的で日本へと連れてこられ、置き去りにされたとみられています。
今回の事件で行われていたとみられている「人身取引」、実はいま日本国内での被害者が増えています。
藤井貴彦キャスター
「国内で保護された『人身取引』による被害者数を表したグラフです」
「2006年から一時、減ったのですが、再び増加傾向にあり、去年は66人となりました。そのうち58人が日本人だということです」
「小栗さん、この『人身取引』というのは、具体的にどういった行為が対象となるのでしょうか」
小栗泉・日本テレビ報道局特別解説委員
「今回の事件では12歳のタイ国籍の少女を、日本の店で雇い性的な行為をさせたとして、経営者らが労働基準法違反などの疑いで逮捕されました。これはまさに『人身取引』にあてはまるとみられています」
「『人身取引』というのは、売春させることや強制労働などを『目的』に暴力や脅迫、だますなどの『手段』を使って、人を『獲得、引き渡す行為』などを指し、実は18歳未満に関しては、暴力や脅迫などの行為が認められなくても、人身取引とみなされるということです」
小栗委員
「実はこれが適用されるケースは幅広くて、他にも具体的な被害のケースとして、次のようなものも含まれます」
●家出をした子どもがSNSで知り合った相手の家に連れ込まれ『暴力団に知り合いがいる』などと脅され、援助交際を強要される。
●外国人の女性が、日本の店で働くダンサーとしてスカウトされ入国するも、パスポートや携帯電話を取り上げられ、ホステスとして働くことを強要される。
●ホストクラブで“ツケの返済”のために、売春を強要される。
藤井キャスター
「ホストクラブでの、いわゆる売掛金によって売春させられるケースは問題となっていますが、こちらも人身取引になるのですね」
藤井キャスター
「いま被害者が増えているとお伝えしましたが、どんな原因が考えられるのでしょうか?」
小栗委員
「人身売買禁止ネットワークの共同代表・吉田弁護士は『こうした人身取引の背景には、被害者と加害者をつなぐブローカーがいて、これも加害者だ』といいます。そして『最近はSNSなどの普及によって、被害者に近づきやすい環境になってしまっている』と指摘しています」
「また『今回は明らかに未成年の少女が働いているにもかかわらずサービスを受ける客側にも大いに問題がある。児童買春は犯罪だが、インターネットなどには性的なコンテンツがあふれていて、法に触れているという意識が薄れてしまっている。政府は啓発を行っているが、それだけではなくならない。処罰の範囲を広げ、厳罰化することが必要ではないか』と話しています」
藤井キャスター
「私たちにできることは何でしょうか」
小栗委員
「吉田さんは『被害者になる人の多くが人間関係で孤立してしまっている人だ』といいます。『その人たちに、ひとりじゃないと知ってもらうことが大切だ』と話していました。『もし被害にあっていそうな人を見かけたら、声をかけたり、相談窓口などに連絡して専門家とつないであげたりしてほしい』ということです」
藤井キャスター
「被害者らしい人を見かける、もしくは自分が被害にあっているかもしれないという方は、最寄りの警察署や匿名で通報できる以下のダイヤルに連絡してください」
【匿名通報ダイヤル】0120-924-839
受付時間(月~金)午前10時~午後5時
(11月6日放送『news zero』より)

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