令和4年7月の安倍晋三元首相銃撃事件で、殺人などの罪に問われた山上徹也被告(45)の論告求刑公判が18日午後、奈良地裁で開かれる。この日で結審の予定。安倍氏の妻の昭恵さん(63)側が意見陳述を行う可能性もある。最大の焦点は量刑で、検察側が極刑を求めるかどうかが注目される。判決は来年1月21日。
これまでの被告人質問などによると、被告家族は平成3年に旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)に入信した母親の高額献金で困窮し、家族関係が悪化。27年に教団を恨む兄が自殺したことなどをきっかけに、被告は教団トップの韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁らへの襲撃を決意した。
しかし、被告は事件の約1週間前に突然、標的を教団幹部から安倍氏に変更。令和3年9月に、安倍氏が教団の友好団体に寄せた好意的なビデオメッセージを見て以降、安倍氏を「旧統一教会に賛意を示す政治家の中で最も著名」とみなし、標的として「頭の片隅にはあった」とした。
唐突な標的変更の背景には、当時は世界的な新型コロナウイルス禍で韓国に拠点を置く教団幹部の来日が見込めなくなったことに加え、被告自身が職を失い、経済的な猶予がなくなったこともあったとされる。
検察側は公衆の面前で銃器が使われたことの危険性を強調。また不遇な生い立ちであっても、犯行当時すでに被告が40代だったことを踏まえ、刑罰を大きく軽くする事情にはならない、とする。
一方の弁護側は、教団による家族への影響を「宗教被害」と位置付け、犯行動機につながる被告の生い立ちを量刑の減軽要素として考慮すべきだと訴えている。
公判では昭恵さんが被害者参加制度を利用。代理人弁護士の出席が続いたが、今月3日の第13回公判では昭恵さんが自ら出席し、被告人質問などを聞いた。制度利用者は公判で意見を述べることができ、この日の公判でその機会が設けられる見込み。被告の最終意見陳述も予定されている。