総選挙を経て政界の景色は総選挙後に一変し、文字通りの「高市一強」が生まれたが、その内実はあまり知られていない。実際には官邸や閣内、党内、民間人を問わず、本当に信頼できる人はわずかだという。これまでの自民党政治家の常識が通用しない「孤高の総理」をめぐる人間関係を徹底解剖する。【全3回の第1回】
「派閥政治」と「長老支配」からの脱却
高市早苗・首相が総選挙大勝でワンマンぶりを遺憾なく発揮している。国会日程が足りないのに「予算の年度内成立を」と無理難題を言い出したかと思えば、消費税の食品税率ゼロを協議する与野党の社会保障国民会議から参政党、共産党を排除して物議を醸した。
国民の高い支持を背景に一強総理の存在感を見せつけているが、高市首相の自民党内の基盤は決して強いとは言えない。
「官邸にも内閣にも自民党執行部にも高市さんが本当に信頼している者は少ない。全部自分で考え、決定する”ぼっち”の総理になっている」(自民党ベテラン議員)
その原因は高市首相が歴代の総理・総裁とは全く違う政治手法をとっているからだ。
これまでの自民党政治は「派閥政治」と「長老支配」だった。派閥間の調整で党内の意見をまとめ、キングメーカーと呼ばれる首相経験者が政権に発言力を行使する。
だが、高市首相は伝統からの決別を図った。
総選挙後の人事では後見人でキングメーカーの麻生太郎・副総裁に衆院議長就任を打診。断わられたが、党内では「”私に指図はいらない”と露骨に麻生さんを棚上げしようとした」(同前)と受け止められている。「長老支配」からの脱却だ。
自前の派閥も必要としていない。今回の総選挙で自民党は66人の新人が当選し、「高市チルドレン」と呼ばれる。
小泉純一郎・首相は郵政選挙の大勝で誕生した大量の新人議員をグループ化して自らの政治基盤としたが、高市首相は新人を囲い込もうとはしていない。むしろ麻生派が新人11人を勧誘するなど旧派閥などの草刈場になるのを放置している。「私に派閥はいらない」という姿勢は明らかだ。
では、”孤高”を貫いているようにも見えるこの首相はどんな人脈に支えられているのか。
首相官邸では高市首相が信頼を置く人物として6人の名前が挙がる。まずは正副官房長官の4人。内閣の番頭格である木原稔・官房長官と尾崎正直氏、佐藤啓氏、事務方で警察庁出身の露木康浩氏の3人の官房副長官だ。
「尾崎、佐藤の両副長官は高市総理が総裁選に敗れて不遇だった時の台湾訪問(2025年4月)にも同行した。露木氏は治安対策が専門で総理が官僚トップの事務副長官に抜擢したほど信頼が厚い。一方、木原官房長官は総理と距離がある。昨年の総裁選でも木原さんは茂木敏充・外相の推薦人だった」(官邸関係者)
“秘密部屋”に入れる2人の秘書官
高市首相には政務・事務合わせて8人の秘書官が付いていて、一番身近に接する存在のはずだが、首相が1人で書類を読む時などに籠もる官邸の専用室に出入りできるとされる「真の側近」は2人だけ。飯田祐二・首席秘書官(前経産次官)と警察官僚で安全保障担当の谷滋行・秘書官の2人だ。
安倍内閣が今井尚哉・首席秘書官兼首相補佐官を中心に秘書官や首相補佐官、正副官房長官に大きな裁量権を与え、「チーム安倍」として政権を運営していたのに対し、「高市総理は資料を全部自分で読み、何事も自分で決定しないと気が済まない。側近とも1対1の関係で、チームとして結束しているわけではない」(同前)というのだ。
(第2回に続く)
※週刊ポスト2026年3月20・27日号