名刀「島津正宗」別にある?…九産大教授が異議「京都国立博物館ではなく名古屋に」

幕末に14代将軍・徳川家茂が孝明天皇に献上したとの説がある京都国立博物館(京博)所蔵の名刀「島津正宗」について、この由緒を持つ刀は名古屋にある別の刀だと、吉原弘道・九州産業大教授(日本中世史)が異議を唱えている。島津正宗は所在不明だった期間が長く、来歴が不確実なだけに、議論の進展が注目される。(若林圭輔)
島津正宗は、鎌倉末期から南北朝期を代表する名工・正宗の作。孝明天皇の妹の和宮が、家茂に嫁いだ際に献上されたと伝わるが、明治以降、長く行方が分からなくなっていた。京博は2014年、大阪の実業家が同館に寄贈した刀を「島津正宗の可能性が極めて高い」と発表した。
根拠として、8代将軍・徳川吉宗の命令で編集された名物リスト「享保名物帳」に掲載された島津正宗の長さと一致することや、刃文が徳川家の名刀などをまとめた資料「継平押形」の模写絵と酷似していることを挙げた。発表時、京博は「正確な経緯は不明」としながらも、明治・大正の刀剣研究の第一人者・高瀬羽皐の著述を引用する形で由緒を紹介した。
吉原教授は継平押形に資料的な信用性はなく、将軍家の刀剣鑑定を担う本阿弥家の資料「本阿弥家留帳」に記載された、持ち手部分にあたる茎が短いとする島津正宗の特徴とも合わないと指摘する。そのうえで、名古屋刀剣博物館を運営する刀剣ワールド財団(名古屋市)所蔵の刀が、孝明天皇の由緒を持つ島津正宗と主張する。
刀の形状が本阿弥家留帳での特徴に合致することや、刀の拵(さやなど外装具)の装飾が孝明天皇に仕えた学者、勢多章甫が和宮降嫁の際に献上されたと記した「正宗」の特徴などに合致することを証拠として挙げている。
刀剣博物館(東京)の石井彰・上席専門研究員は「理詰めでいけば、吉原説は傾聴に値する」と話している。一方、京博側は「享保名物帳に島津正宗だと記載された刀が、当館の刀である可能性が極めて高いことに変わりはない」との見解を示している。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする