「イオンモール熊本」で7月28日、地震の直後に発生した爆発事故では、7人が死亡したことが明らかになっている。亡くなったのはいずれも館内で働いていたテナント従業員だった。
【写真】会見の様子でも明暗が分かれた…イオンとテナント企業の《明らかな違い》
一方、約3000人の来訪客は無事避難し、イオン側の直接雇用の従業員に死者は確認されていない。
事故原因や法的責任の所在に関しては、今後の調査を待たなければならない。しかしながら、事故発生後の対応という点においては、企業の危機管理を考えるうえで見すごせないポイントが明確になりつつある。
■従業員が死亡したテナント企業へ批判の声が殺到
今回の事故でまず問われるのは、「なぜ犠牲者がテナント従業員に集中したのか」という点である。施設全体としては、多くの来訪客を避難させることができたにもかかわらず、一部の店舗では、避難とは逆方向の行動が取られていた可能性が報じられている。
とりわけ批判を集めたのが、雑貨店「ハビタ」を運営する企業の対応だ。報道によれば、地震の後、売上金を金庫へ移すため、従業員に館内へ戻るようにと幹部が依頼し、その後、従業員2人が死亡したという。また、アパレル大手オンワードホールディングスでも従業員3人の死亡が確認されている(ただし、オンワードについては、従業員が戻った理由が会社の指示だったのか自身の判断によるものなのか、本稿を執筆している8月4日正午時点では明らかになっていない)。
もちろん、爆発そのものの原因と、個々の企業の指示との因果関係は慎重に検証されなければならない。また、現時点では事故の責任を断定することはできない。
しかし、危機が発生した後の意思決定という点においては、イオン側と一部テナント側の対応が対照的だったことは否定できない。
イオン側は来訪客と従業員の避難を優先し、結果として大多数の人命と安全を守った。対して一部テナントでは、売上金や店舗運営といった平時の業務が、非常時にもなお判断基準として残っていた。ここに、今回の事故が社会へ突きつけた本質的な問題がある。
■「有事にも平時の意思決定を続けた」ことの問題
従業員に館内に戻るように指示をしたハビタに対して「人命より売り上げを優先した」といった批判が殺到している。しかし、問題の核心はそれだけで捉え切ることはできない。より本質的なのは、「有事」にもかかわらず、「平時」の意思決定を続けてしまったことにある。