人気声優・津田健次郎さんの請求棄却 「声模倣」動画は既に削除

生成人工知能(AI)で自身の声を模倣した動画を無断で公開されたとして、人気声優の津田健次郎さんが動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営するシンガポール法人に動画の削除を求めた訴訟の判決で、東京地裁は30日、津田さんの請求を棄却した。動画は既に削除されており、請求には理由がないとした。
一方で、判決は声も肖像と同様に人格の象徴として権利侵害の対象になり得るとの見解を示した。「声の権利」を巡っては、生成AIによる声などの無断利用に対する民事上の責任を議論する法務省の有識者検討会が8月に「声も保護対象になる」との解釈指針を示している。指針を追認した初の司法判断となる。
津田さんの声は「艶のある低音ボイス」が特徴。「イケてるボイス」(イケボ)として人気で、アニメ「呪術廻戦」の七海建人役や「ゴールデンカムイ」の尾形百之助役などで知られる。
訴状によると、氏名不詳者のアカウントは2024年7月~25年9月、津田さんの声質を模したナレーションを付けた都市伝説や陰謀論を扱う動画をTikTokに少なくとも188件投稿。再生回数に応じた報酬を月50万~75万円得たとしている。
津田さん側は訴訟で、動画の投稿は俳優らの肖像などから生じた利益を独占できる「パブリシティー権」の侵害に当たるとし、声優の声は保護対象になると訴えた。自己の商品・営業を他人の商品・営業と混同させる行為を禁じた不正競争防止法に違反するとも主張した。
これに対し運営法人側は、25年11月の提訴後に動画が削除されたことを明らかにし「津田さんが裁判を起こす利益はなくなった」と反論。パブリシティー権侵害にも当たらないと主張していた。
判決は動画が削除されていることを理由に、津田さんの声が生成AIを用いてまねられたのかや、実際にパブリシティー権が侵害されたかは判断を示さなかった。【安達恒太郎】

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