中国がまた、理不尽な要求を突き付けてきた。東京電力福島第1原発処理水の海洋放出をめぐり、「中国独自のモニタリング(監視)」を要求してきたのだ。処理水放出については、国際原子力機関(IAEA)が「国際基準に合致する」と評価し、世界保健機関(WHO)も「問題はない」との見解を示している。ところが、中国は「核汚染水」とレッテル貼りし、日本産水産物の禁輸を続けている。岸田文雄政権は、中国のゴリ押しを認めるのか。
「中国が、独自にモニタリングできる機会をつくってほしい」
中国の王毅政治局員兼外相は23日、訪中した公明党の山口那津男代表に、こう要求した。中国側は「科学的見地から双方が共通の道を見いだすことが重要」との認識を示したというが、これはおかしい。
日本政府は8月24日の処理水放出以降、モニタリング結果を当事国・日本を除いたかたちで客観的に分析・評価するIAEAの国際的枠組みに加わるよう中国政府に複数回提案してきたが、中国は拒否しているのだ。
ある日本政府関係者は「あまりにも一方的で、もはや理解不能だ」と語気を強める。
米国での日中首脳会談(16日)でも、中国側の姿勢は目に余るものだった。
岸田首相が、科学的根拠に基づく冷静な対応と禁輸の即時撤廃を要求したのに対し、習近平国家主席は処理水を「核汚染水」と断定し、「日本は国内外の合理的懸念に真剣に対応し、責任を持って建設的態度で適切に対処すべきだ」と言い放っている。
中国事情に詳しい評論家の石平氏は「こんな要求は一蹴すべきだ。今になって監視を要求するということは、中国が科学的根拠もなく『核汚染水』と批判してきた証拠だ」と矛盾を指摘する。
外交の基本は「相互主義」である。中国が、日本の処理水放出を監視したいというなら、日本にも中国の原発が放出する放射性物質を監視させるべきだ。中国が、今ごろになって「独自監視」を要求してきた意図は何なのか。
石平氏は「中国は振り上げた拳の落としどころを見失っている。処理水問題で日本を狙い撃ちにして『外交カード』に使おうとしたが、中国国内の世論の反応は薄く、日本世論も冷静に反応した。水産物の輸出先は、中国から他国への転換が進んだ。日本は結果的に、中国の暴走によって『中国リスク』を軽減できた側面もある。中国側には焦りがあるのだろう」と分析した。