去年の年末、大阪市平野区で、忘年会に同席していた知人男性を、包丁で刺殺した罪などに問われた男。裁判では「殺す気はなかった」と殺意を否認していました。大阪地裁は11月27日、男に懲役18年の有罪判決を言い渡しました。一方で脅迫の罪については無罪としました。 日雇い労働者だった稲掛躍被告(56)は、以下の罪に問われていました。▽去年12月31日の午前1時すぎ、大阪市平野区のスナックの店先の路上で、新田浩之さん(当時55)の右側胸部を包丁で刺し殺害した罪▽その約50分後に西成区内の公衆電話から、そのスナックを経営していた女性の携帯電話に電話をかけ、「お前殺すまでは、捕まらないからな」と脅迫した罪 ▼女性関係めぐり被害者に恨みか…二次会一時退席しコンビニで包丁購入 起訴状や、裁判で示された事件の経緯をまとめます。 稲掛被告は、生活の支援をスナック経営の女性から受けていたこともあり、その女性に心理的にも依存していました。 しかし女性は、新田さんに好意があることを被告に伝えたということです。 稲掛被告と新田さんは地元の知り合いで、事件直前、その女性が経営するスナックで、他の知人らと忘年会の二次会をしていました。 ところが稲掛被告は、二次会の途中に「たばこを買う」と言って一時退席し、コンビニエンスストアで包丁を購入。店の近くにとめていた自らの自転車の前かごに包丁を入れて、店内に戻りました。 そして二次会が終わり一同が退店した際に、稲掛被告は「なめとったらあかんぞ!」と声を出して、背後から包丁で新田さんを襲ったということです。包丁は新田さんの右側胸部に入り、肝臓を貫通しました。死因は失血死でした。 その後、稲掛被告は自転車で逃走。西成区内の公衆電話からスナック経営の女性に電話した際、「お前殺すまでは、捕まらないからな」と脅したとされています。 その後も逃走を続けた稲掛被告。今年1月1日の夜にJR姫路駅近くにいるのを捜査員が見つけ、逮捕に至りました。 ▼「殺す気はなかった」殺意を否認 脅迫罪は全面否認 これまでの裁判で稲掛被告は、新田さんを刺したことは認めたものの、「殺す気はなかった。殺そうとは思っていなかった」と、殺人罪について殺意を否認しました。また、脅迫罪についても「脅迫はしていない」と述べ、「お前殺すまでは、捕まらないからな」と発言したことも否定。起訴内容を全面的に否認していました。 検察側は、スナック経営の女性が新田さんに好意を寄せたことで、稲掛被告が一方的に敵意を募らせ、犯行に及んだと指摘し、殺人の故意は成立すると主張。稲掛被告に懲役22年を求刑していました。 一方弁護側は、子どもの頃の不遇な家庭環境などの影響で、被告は“依存的”な傾向があったと指摘。事件前、金銭的な問題からメンタルクリニックの受診が難しくなるなどしていた中で、生活を支援してくれたスナック経営の女性に依存するようになったと主張していました。 ▼大阪地裁は懲役18年を言い渡す 脅迫事件は無罪 11月27日、大阪地裁は稲掛被告に懲役18年の判決を言い渡しました。一方で脅迫の罪については無罪としました。