恋愛感情を抱かせて金をだまし取るロマンス詐欺を巡り、弁護士の名義を使わせて被害金の回収業務を行わせたなどとして、大阪府警は5日、「RMC法律事務所」(東京都千代田区)の代表弁護士、竹原孝雄容疑者(82)(同新宿区)ら男4人を弁護士法違反容疑で逮捕した。同事務所は約300人から回収業務の着手金として1億円超を集めており、府警が実態解明を進める。
ロマンス詐欺の被害が急増する中、被害金の回収見込みがないのに弁護士が高額の着手金を受け取る問題が相次いでおり、弁護士の摘発は全国初とみられる。
他に逮捕されたのは、同事務所元従業員、山根靖広(55)(千葉県四街道市)と会社役員、谷合一紀(53)(東京都府中市)、会社役員、村松純一(41)(さいたま市南区)の3容疑者。
捜査関係者によると、竹原、山根、谷合の3容疑者は共謀し、竹原容疑者の弁護士名義を村松容疑者に利用させ、村松容疑者は2021年11月~22年9月、弁護士資格がないのに、ロマンス詐欺の被害者5人に被害金返還請求に関する助言や指導などを行った疑い。村松容疑者は5人から着手金計約320万円を受け取ったのに、被害金はほぼ回収していなかったという。府警は、竹原容疑者が名義貸しの対価を得ていたとみて調べる。
詐欺の被害金回収は法律事務にあたり、弁護士法は、弁護士資格のない者が報酬目的で行うことを「非弁活動」として禁止。弁護士が無資格者に名義を利用させることも「非弁提携」として禁じている。竹原、山根、谷合の3容疑者は非弁提携、村松容疑者は非弁活動の容疑でそれぞれ逮捕された。
府警は10~11月、同事務所のインターネット広告で被害金の回収実績があるように偽り、21年に男女3人から着手金計約630万円を詐取したとして、山根、谷合、村松の3容疑者を詐欺容疑で逮捕していた。
竹原容疑者は1971年、東京弁護士会に弁護士登録。2000年に弁護士資格のない事務員に多重債務処理を行わせたほか、21年には住民票を不正取得したとして、それぞれ10か月と6か月の業務停止処分を受けた。
ロマンス詐欺は、SNSなどを使って親しくなった相手をだます手口。国民生活センターによると、相談件数は18年度の45件から22年度には約1000件(被害額約42億円)に急増した。