東京地検特捜部が捜査を進める自民党派閥のパーティー券収支をめぐる問題。“裏金”疑惑の安倍派に続き、二階派でも“不記載”の疑いが浮上しています。党幹部からは総理が退陣に追い込まれた汚職事件になぞらえ「令和のリクルート事件だ」との声も。
経団連会長は「誰が考えてもいけないこと」と批判
安倍派の議員の受け止めはさまざまです。
自民党(安倍派)高階恵美子衆院議員「ちょっと理解できないです」
自民党(安倍派)越智隆雄衆院議員「私からコメントすることはありません」
自民党(安倍派)山田宏参院議員Q.一部の議員がキックバック(裏金)を受け取ったともいわれているが?「私はノルマしか売っていないので。数が多いようだから、それをちゃんと正確に把握しなきゃいけないんだろうと思います」
自民党(安倍派)江島潔参院議員Q.安倍派の政治資金の件でキックバック(裏金)はあったか?「…」
自民党・安倍派の政治資金“パーティー”をめぐる疑惑。
派閥は各議員にパーティー券の販売ノルマを課していますが、安倍派では少なくとも5人の議員がノルマを超えて集めた額を政治資金収支報告書に記載せず、“裏金”にしていた疑いが持たれています。
その総額は、2018年からの5年で1億円を超えるとみられています。
当時、安倍派の実務を担う事務総長を務めていた松野官房長官は、これまで…
自民党(安倍派)元事務総長松野博一官房長官「(11月21日)政府にある立場としてお答えすることは差し控えさせていただきます」「(12月1日)政府の立場としてお答えは差し控えさせていただきます」
そして、12月4日も…
自民党(安倍派)元事務総長松野博一官房長官「政府の立場としてお答えを差し控えさせていただきます」Q.政府の立場といっても、長官自身にも疑惑がかかっている。ぜひお答えいただけないか?「従来から申し上げていますとおり、この場は政府の立場、官房長官記者会見として行っておりますので、お答えは差し控えさせていただきます」
では、政府の立場ではない、今の事務総長の認識はというと…
自民党(安倍派)高木毅事務総長「慎重に事実関係を確認して、適切に対応していきたいと思っております。(事務総長は)会計に関しては関わっておりませんので、何とも言いようがございません」Q.安倍派では座長が会計するのか?「それはわかりません」Q.事務局だけになる?「そこはわかりません」
安倍派の会計担当者は、いったい誰なのでしょうか。
さらに、別の派閥でも新たな疑惑が。二階派では、議員に割り当てられたパーティー券の販売ノルマを超えた収入が、収支報告書に記載されていない疑いがあることがわかりました。
ただ、複数の関係者によりますと、議員にキックバックした際には「支出」として報告書に記載していたということです。
東京地検特捜部は、二階派の関係者から任意で事情を聴いているということです。
経団連の十倉会長は、一連の疑惑を厳しく批判しました。
経団連 十倉雅和会長「裏金みたいになってるということでしょ?それは誰が考えてもいけないことじゃないでしょうか。それぞれの政治団体において、しっかり検証なされるべき」
自民党の茂木幹事長は…
自民党(茂木派)茂木敏充幹事長「国民の関心も高いと受け止めております。
まずパーティーを主催している各政策グループには、すでにしっかり説明するよう要請しているところでありますが、引き続き十分な説明に努めてもらいたいと思います」
安倍派という最大派閥の“おごり”を象徴する事件か
藤森祥平キャスター:政治資金パーティーをめぐる、この裏金疑惑。星さんの取材では、最大派閥・安倍派のやり取りの動きにはキックバックのパターンと、派閥を介さないパターンの2つがあるということです。
▼キックバックのパターンたとえばパーティー券を議員が200万円売った場合、そのノルマが100万円だったとしますと、稼いだ200万円を一旦派閥にすべて預けて、ノルマ以外の100万円分だけ戻ってきます。
▼派閥を介さないパターン200万円をすべて派閥に戻すのではなく、ノルマの100万円分だけを派閥に渡して、残りの100万円はそのまま自分のポケットの中に入れます。
小川彩佳キャスター:どちらであっても問題なわけですけれども、このパーティー券の裏金疑惑をどうご覧になっていますか?
パトリック・ハーランさん:がっかりですよね、まず。どうしてもアメリカと比較してしまいたくなるんですけど、アメリカの場合は、たとえば2023年の春に、ある暗号資産の取引所を経営する人が150億円相当の裏金、不正政治献金をしたことで捕まったばかりなんですけど、額がまったく違うんですよ。
アメリカみたいに汚い政治とカネの国ではなく、クリーンな日本のままでいてほしいです。もしくはクリーンなままの日本になってほしいなと、今日つくづく思っています。
小川キャスター:星さん。そのクリーンさが揺らいでいるということなのか…。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩氏:今回の場合は、額はまだまだこれから広がると思うんですけれども、私は長期政権の“うみ”というか、おごりが象徴的に表れていると思います。
つまり最初は、20万円を超えた献金はもう記載しなくてもいいんじゃないかと。そこでお咎めなしだったと。
その次は、途中でノルマ以上のものをピンハネしてもお咎めなし。さらにキックバックしてもお咎めなしと、安倍時代という長期政権の中で、最大派閥が「我々は何やっても大丈夫なんだ」ということが積み重なって起きてきた。
それで集まったお金が、さらに最大派閥を増やしていくというところに使われてきたので、かなり根が深いというか、構造的な問題といっていいと思います。
「インボイス制度は政治家にこそ必要」との意見も
藤森キャスター:私たちJNNが12月2~3日に行った最新の世論調査では、やはりこの問題については89%の方が「問題がある」と答えています。
特に、岸田総理大臣の不記載に対する説明が「十分ではない」という答えが、73%にも及んでいるということになりました。
私たちは、街の皆さんの声も聞いてきました。
保育士「生活費など切り詰めてやっているんですけど、政治家の偉い人が自分のポケットマネーを増やしているとなると、ちょっとモヤモヤするというか…」
会社員「結局、資金集めという名目で私的に使うお金貯めているのかなと思ってしまいますよね」
古着店店主「あなたたちこそインボイス登録をしっかりして、お金の流れを明確にせよという苛立たしさがありますね。
(インボイスは)政治家という存在においても必要な仕組みといいますか、政治家こそ必要。(政治家自ら)優先して導入してもらいたいですね」
お茶屋店主「私たちは請求書・領収書をちゃんと出さないと経費が落ちませんから、そういったところで政治家さんは上手くやっているなと。
政治家さんはそうやって『記載しなかった』『記入忘れでした』で済むんだったら、僕らも…。でもそういう風にやると、税務署からつつかれますし」
小川キャスター:皮肉な声もありますけれども、生活を切り詰めているという女性の方もいらっしゃいました。
国民に対してはインボイス制度も始まりましたけれども、お金の流れをきっちり管理するような動きがあるにもかかわらず、「じゃあ自分たちはどうなの」という声もありました。
パトリック・ハーランさん:まったくそのとおりですね。インボイス制度、マイナンバー制度は、お金に紐づけて追跡できるように、流れの見える化が目的の一つでした。
これは脱税とか、闇組織の資金源断絶のためには必要なんですけど、政府が我々のお金の流れを把握してるんだったら、我々も政治家のお金の流れを把握していいと思うんですよ。我々に当てる制度、政治家から対象にしていただきたいなと思います。
小川キャスター:なんでグレーのところがあるんだ、と。
迫る強制捜査…岸田政権は来春に行き詰まる可能性
藤森キャスター:どうも今回、この問題が政治に与える影響は大きくなりそうだと。星さんの取材では、自民党幹部は「令和のリクルート事件になる」というふうに話をしているそうですね。
リクルート事件は35年前(1988年)ですが、当時の竹下内閣が退陣に追い込まれる、いわば当時は戦後最大級ともいわれた巨大な汚職事件ということで、それぐらいの衝撃がまた、岸田政権を揺るがすものになるかもしれない。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩氏:私も駆け出しの政治記者で取材したのが、このリクルート事件でした。
ただ、今の岸田政権というのは、巨大な最大派閥の安倍派が支えて誕生したというのは一つありますよね。
藤森キャスター:岸田政権を支えている、安倍派「5人衆」といわれる要職。
<閣僚>▼松野博一官房長官▼西村康稔経済産業大臣
<自民党幹部>▼萩生田光一政調会長▼高木毅国対委員長▼世耕弘成参院幹事長
TBSスペシャルコメンテーター 星浩氏:松野さんと高木さんは現職ですが、安倍派の事務総長を務めました。西村さんも務めたんですけどね。
松野さんも西村さんも、その経緯について一切具体的に語っていないわけです。これがこの問題の疑惑をさらに深めているわけですので、やはり松野さん、西村さん、そして高木さんも自民党総裁としては部下ですから、ここで岸田総理が「きちんと説明しろ」と言い出さない限り、この問題は解明されません。
もしかするとこの3人、この5人も「自分たちで説明しなくても岸田さんから責められることはない」とたかをくくっている可能性もありますので、そこは岸田さんの決断次第という局面になりつつあると思います。
小川キャスター:岸田さんとしては、ただでさえ逆風が吹いている中で、ここに来て「令和のリクルート事件」ともいわれるようなことが起きてしまいそうだということですけれども…。
パトリック・ハーランさん:リクルート事件があったあとも自民党続投になりましたけど、僕が不思議に思うのは、桜を見る会で安倍派というか、安倍元首相があんなに叩かれたのは2019年。ついこの間じゃないですか。
でも、そのあとも一新できていない、一変できていない、クリーン化できていないというのは、とても残念ですね。
トランプ元大統領も政治とカネの問題が常に疑惑として持ち上がって、またうやむやになるんですけど、くれぐれも我が国のようにならないでいただきたいです。お願いします。
小川キャスター:この先なんですけれども、どう展開していくのか?
TBSスペシャルコメンテーター 星浩氏:これから年末年始にかけて、かなり日本の政局は緊迫してくると思います。
おそらくこの流れでいきますと、安倍派を中心とした派閥の事務所に対する、いわゆるガサ入れ、家宅捜索が近く行われます。臨時国会が明けたあとに、場合によっては国会議員、それから派閥の事務職員に対する強制捜査につながるんじゃないかと。
それによって、仮に立件される議員とか職員が出てくるとなると、政権に与える影響は非常に大きいと思います。
通常国会が1月から始まりますが、ここではおそらくこの問題一色になり、野党の攻勢は一層強まる。岸田政権は、3~4月ぐらいになって行き詰まってくる可能性が出てきたといっていいと思います。
小川キャスター:嵐の前夜という様相を呈してきました。