京アニ公判 被害拡大「ツキがなかった」 被告、遺族感情を逆なで

京都アニメーション放火殺人事件で、殺人罪などに問われた青葉真司被告(45)は6日、被告人質問で遺族に初めて償いの言葉を述べた。一方、想像以上に被害が拡大したことについて「運、ツキがなかった部分があるのは否定できない」と発言。京アニへの恨みは今もあると述べるなど、遺族や被害者の感情を逆なでするような投げやりな態度も見せた。
「申し訳ありません」
この日、法廷で繰り返し謝罪の言葉を口にした被告。第1スタジオの凄惨(せいさん)な状況を後で知り「絶句した記憶がございます」とも述べた。一方、遺族らに目線を送ったり、頭を下げたりすることはなく、終始うつむきながら話していた。
これまでの公判で弁護側は、第1スタジオの構造が被害の拡大要因の一つだと主張。被告はこの日、第1スタジオにらせん階段があったことは知らなかったとした上で、「それによって火が速く回ったと聞いた。運、ツキがなかった部分があるのは否定できない」「らせん階段じゃなかったら(火は)1階に広がるだけで、2、3階の人は無事」などと語った。
また謝罪の言葉が遺族に届くものであるかと問われた被告は「それは(聞く側の)取り方による。自分の問題でない」と早口でまくし立てる場面もあった。
事件の動機形成に関し、被告は法廷で京アニによる小説の盗作を主張している。認識を問われた被告はこの日も「京アニも(盗作を)やってきたという思いはあります。正直に申し上げます」と主張。京アニによって犯罪に追い込まれたのかと問われると「今でもそういう呵責(かしゃく)は消えない」と訴えた。
質問に先立ち検察官は、重いやけどで手術を49回受け、右手の人さし指を失った被害者がつづった書面を読み上げた。「鏡を初めて見たときの絶望感を忘れない。死を選ぶのも、生を選ぶのも、この体で生きることがつらい」との苦しみが明かされた。

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