栃木県内の児童養護施設など子供たちが暮らす施設で、2018~22年度の5年間に、計15件の子供同士の性暴力事案が確認されていたことが8日、読売新聞の県に対する情報公開請求で分かった。施設内で起きる子供間の性暴力は、全国的にクローズアップされつつあり、専門家は明らかになった被害は「氷山の一角」として、関係機関に早急な対応を求めている。(三枝未来)
県が開示した文書によると、15件の内訳は異性間9件、同性間6件で、児童養護施設や一時保護所、児童自立支援施設で発生していた。「男子高校生が女子中学生の部屋に忍び込み、性行為に及んだ」「男子小学生が女子児童の胸を触るなどした」「女子が同性の居室に入り込み、胸などを触るよう強要した」などがあり、当事者は小学生から高校生まで幅広い。
県こども政策課は「発生件数は多いと感じている」と受け止め、職員研修を強化するなど対応を進めているという。また、「加害者の指導や被害者の心のケアをしっかり行っている」と説明する。
施設などでの子供同士の性暴力は、全国で問題となっている。三重県内の児童養護施設で、多数の性暴力事案が判明したことをきっかけに、厚生労働省は18年度、全国の児童養護施設などを対象に初の実態調査を実施。その結果、17年度に全国の施設などで、子供同士の性的なトラブルが687件起きていたことがわかった。同省はこれを受け、予防や早期発見に向けたチェックリストを作成・公表している。
関西福祉科学大の遠藤洋二教授(児童福祉)は、子供同士の性暴力は「施設だけに限った話ではない」としたうえで、▽一定数の子供が同じ場所で生活する▽過去に虐待や性被害を受けていた場合、被害者や加害者になりやすい――といった施設の特性を挙げ、「性暴力が起きやすい環境にある」と指摘する。
また、子供が被害を言い出せなかったり、施設内だけで情報が止まっていたりする場合も多く、性暴力の定義も明確ではないことから、実際の被害件数はこれよりはるかに多いとの見方もあり、「保護者や関係機関に可能な範囲で情報を開示し、協力して予防策や被害者への支援を考えるべきだ」と訴えている。