“つば”“首絞め”鉄道係員に…「カスハラ」の実態、国交省が初調査

「『死ね!』と暴言を吐かれた」「『土下座しろ』と威圧的な言葉を繰り返された」――これらは鉄道の係員が実際に経験したカスタマーハラスメントです。国土交通省が初めて“カスハラ”について調査を行い、22日に公表しました。
約20年間、鉄道会社に勤務する現役の駅員に話を聞きました。
約20年勤務する駅員
「(乗客が)ドアをたたいたり、係員に殴りかかろうとしたり、『土下座しろ』と言ったり、そこもよくある話なので」
乗客からの理不尽な言いがかりや言葉の圧力。いわゆるカスタマーハラスメントを受けた経験について話してくれました。
約20年勤務する駅員
「大声からはじまり、時にはネクタイをつかまれたり。冷静になっていただくのをひたすら待つという感じで辛抱強くやっている」
こうした鉄道会社の駅員らに対する“カスハラ”について、国土交通省が初めて調査し実態を明らかにしました。
その数、昨年度把握できたものだけで1124件。神奈川(220件/1位)や東京(178件/2位)、大阪(173件/3位)など鉄道の利用者が多い都市部で多い傾向となっています。
取材した駅員がつい最近受けたという“カスハラ”は――
約20年勤務する駅員
「お札がぬれていたりで券売機が受け付けない時に『なぜ使えない? お金なんだろう』。両替させていただきますというふうにご案内すると『俺はこれが使いたいんだ』と、一歩も譲ってくれないのでお詫びしながら冷静になるのを待つ感じ」
国交省が22日発表した事例では――
【事例1】
10代の乗客が、線路側に身を乗り出し列車を撮影していたため注意すると「ふざけんじゃねえ」と言いながらつかみかかってきた。
【事例2】
最終列車で目的地で降りそびれた20代の客に「タクシー代金を調べろ!」と強い口調で言われ、駅係員が調べると「まだか」「遅い」「使えんやつやのー」と言われた。
約20年勤務する駅員
「“お客様は神様です”と、1円でも払っていただければ当然、お客様なんですけど、今の時代にはそぐわないのかなというところ」
さらに国交省は、“カスハラ”では済まされない悪質な“暴力”の事例も公表しました。
今年2月、ドアを手動で開けるための「ドアコック」が操作されたため、それをしたとみられる40代の乗客に確認すると、激怒し壁を強打するなど暴れ出したといいます。
さらに、手を振り回しながら車内を歩き回り、止めようとした駅係員の左胸を強打。肋骨を折ったということです。
別のケースでは、ホームで放尿していた乗客を見つけたため駅係員が注意したところ逆上。顔を殴り、首を絞めるなどの暴行をしたといいます。
ほかにも、駅務室に客が入室し暴れ出したため、警察に通報すると「警察呼ぶのか、何で呼ぶんだ、お前はくそだ」と言い、傘で左足をたたくとともに、唾を吐きかけたといいます。
こうした暴力事案は、国交省が把握するだけで昨年度、569件。そのうち、乗客が飲酒していたケースは半数以上にのぼっています。
弁護士は、「唾を吐きかける」などの行為でも犯罪にあたる可能性があると指摘します。
元大阪地検検事 亀井正貴弁護士
「(唾を吐きかける行為について)唾のかけ方、勢い、程度によっては、暴行罪が成立する可能性があります」
「(放尿について)公衆の集合する場所で大小便をしたと軽犯罪法に該当する可能性があります」
「公然わいせつ罪が成立するかどうか」(人がいる場合)
車両の壁や扉をたたく行為も――
元大阪地検検事 亀井正貴弁護士
「強打することによって相手を脅すということであれば、脅迫罪が成立する可能性がある」
もし、私たちがこうした行為を目撃した場合はどうすればいいのでしょうか。
元大阪地検検事 亀井正貴弁護士
「駅員に対して侮辱するような行為をするとか、怒鳴って脅して土下座させるとか、そういった行為は犯罪ですから、関係機関に通報するとか、警察に連絡するとか、犯罪として厳正に市民も対応すべきだろうと思います」
(12月22日放送『news zero』より)

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