「田中さんは、中国人の愛人、その子供の3人で暮らしています。その愛人女性が外部との接触を絶っており、私が電話しても切られてしまうので、ここ1年、話もできていません」
そう語るのは、2021年まで理事長に君臨し、日大のドンと呼ばれた田中英寿氏(77)の義姉だ。
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ガバナンスが機能不全に陥った“元凶”
アメフト部における薬物問題を皮切りとして、経営のガバナンスが厳しく問われ続ける日本大学。
12月6日夜、現役部員と保護者を対象にした説明会が開かれ、澤田康広副学長をはじめ、益子俊志スポーツ科学部長、中村敏英アメフト部監督らが出席した。
説明会では、ある学生が、林真理子理事長をパワハラで訴えた澤田副学長を追及する場面があった。
「澤田副学長! 部員よりも、あなたの行動について報道されたことが多いと思うんです。責任を感じていると思いますが、それが行動に現れていない」
ところが、そうした声に澤田副学長は正面から応えず、「あなた方にもう会うことはないと思います」と“捨てゼリフ”を口にする始末だったという。
ガバナンスが機能不全に陥っている日大。その元凶として、今でも名前が挙がるのが元理事長の田中氏だ。田中氏は薬物事件の発覚後、公の場に姿を一切、見せていない。
日大側は不動産の仮差押の手続きを粛々と進める
また今年3月、田中氏は、日大から附属病院を巡る背任事件で損害を受けたとして計11億1300万円の損害賠償を求める裁判を起こされている。
田中氏は2021年に脱税容疑で逮捕され、22年4月に有罪判決が確定。だが、ここにきて「捜査機関から自白を強要された」と、日大側の損害賠償の請求棄却を求めている。
〈「お前が認めないんだったら、奥さんを逮捕することになるぞ。」などと何度も脅迫された〉
〈脳卒中などの疾病のために余命いくばくもない状況だった妻と会うために、捜査機関から言われるがまま、自白調書の作成を行った〉(以上、裁判記録より)
しかし、日大側は、田中氏の「ちゃんこ料理 たなか」の所有分や女子相撲部の寮など、不動産の仮差押の手続きを粛々と進めており、田中氏の旗色は悪くなるばかりだ。
妹の死去後、田中氏は愛人と生活を共にするように
古巣の日大からも追い詰められ、雲隠れする田中氏。だが、親族の前からも姿を消しているというのだ。
冒頭の義姉(田中氏の妻である故・征子氏の姉)が、現在の様子を明かす。
「昨年、妹が死んでから田中さんは愛人と生活を共にするようになった。現在は(体調がすぐれず)食事も満足に摂れないほどで、外に出られるのも週に1回あるかどうかだと聞いています。基本的に都内の自宅にいると思いますが、もしかしたら、別荘に滞在しているかもしれません」
小誌記者は、宮城県内の地方都市で田中氏の別荘を発見。80坪以上ある敷地に、立派な2階建ての和風住宅が立っていた。表札には「田中」と記されている。
別荘の資産価値は土地・建物合わせて約4000万円
登記簿によると、田中氏は土地を1995年に購入。建物の登記はされていない。近隣住民が語る。
「最近新しく建てられた住宅で、施工業者が『日大の偉い人の家』と話しており、近所では有名なお宅です。今年の夏、1カ月ほど滞在されていましたし、11月の連休中にも、電気がついていました。50代の女性が出入りされていますが、田中さんをお見かけしたことはありません」
地元の不動産業者によると、資産価値は、土地・建物合わせて約4000万円という。
日大によって、田中氏所有の不動産が次々、仮差押されるなか、なぜこの別荘だけが免れているのか。
代理人弁護士に対し、田中氏の生活ぶりも併せて質問したが、回答はなかった。
日大の元ドンと、大学側の泥沼の暗闘は、まだまだ終わりが見えない。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年12月21日号)