神奈川県は、特定外来生物「タイワンリス(クリハラリス)」の生息域拡大に危機感を強め、外来生物法に基づく防除実施計画を今年度中に策定し、来年度から広域的な駆除を進める方針を明らかにした。分布域が三浦半島などの県南東部から北西部に広がり、ニホンリスなど在来種の生態系への影響や生活・農林業への被害が拡大する恐れが高まっているためで、来年2月に市町村の同意を得れば、計画の対象を県全域にしたい考えだ。【橋本利昭】
計画の素案によると、防除期間は2024年度から5年間。生息状況に応じ、高密度区域(横須賀、鎌倉、逗子、三浦市、葉山町)▽分布拡大区域(横浜、川崎、大和、藤沢、茅ケ崎市)▽両区域以外を対象にした侵入警戒区域―の三つに区分。高密度区域はこれまでの取り組みを継続して個体数削減で被害低減を図る。分布拡大区域は生息域の拡大を防ぐ一方、継続的に子孫を作る定着状態の初期にある地域では完全排除を目指す。侵入警戒区域ではタイワンリスを定着させないことを目標に定める。
タイワンリスは現在、高密度区域の5市町のみがそれぞれの実施計画に基づいて駆除。鎌倉市では今年「異常」と言われるほど、捕獲数が急増中だ。分布域は三浦半島地域で繁殖数が多いとされ、県北西部に拡大しているという。このため、県は、わな猟の免許がある人らに担当区域の捕獲に従事してもらい、県全域で捕獲数や場所などを把握し、拡大状況を確認したい考え。
防除をしなかった場合、丹沢の山間部のニホンリスなどと餌や巣場所を巡って競合し生息を脅かすほか、農作物被害や樹皮はぎによる樹木の枯死などが生じる恐れがある。
県自然環境保全課の担当者は「今後、県西部の連続した山々に侵入した場合、防除が困難になり生態系への多大な影響が懸念される。分布拡大の最前線地域や未侵入地域でいかに拡大防止対策を進めるかが課題で、市町村と問題認識を共有して広域的な防除をしていきたい」と話している。