土木技術者争奪戦 公務員減少防止へ大阪府・市町が初の合同説明会

国や自治体の土木系技術公務員が減少している。少子化に加え、公務員人気の低下や民間企業の待遇改善などが背景にある。少ない人材を国、民間企業とで取り合う形になり、地方自治体は苦戦している。大阪の取り組みを追った。【菅沼舞】
福利厚生、働きやすさなどPR
2023年12月下旬。府と府内の20市町が、技術系公務員に特化した初の合同説明会を府咲洲庁舎(大阪市住之江区)で開いた。ブースに特産品を展示し、各自治体の担当者がまちづくりの取り組みや福利厚生などをスライドや資料で紹介した。
四條畷市は採用試験のオンライン化やペーパーテストの廃止など、「新しさ」や「挑戦」を前面に押し出した。柏原市は特産の手ぬぐいを配って地域資源を宣伝し、公共施設を紹介しながらまちづくりの魅力を語った。東大阪市は「ラグビーのまち」をPR。吹田市は市民1人当たりの公園面積が府内トップクラスであると強調し、「公園に興味がある人はぜひ」と呼びかけた。
今回のイベントの特徴は、学生だけでなく保護者や、各学校で進路指導などを担う教員も対象にしたことだ。参加者163人のうち、約3分の1は保護者と教員だった。企画した府都市整備総務課は「就職を考える上で、保護者や教員の影響が大きい。まずは技術系公務員がどのような職業かを知ってもらいたい」と狙いを語る。
府立都島工高2年、篠崎夢実さん(17)は母親と参加。篠崎さんの母は「育児休業の取得率を知りたかった。女性の土木職はしんどいかと思ったが、計画や積算などのデスクワークもあるとわかった」と語る。
地方自治体の土木系技術公務員は慢性的に不足している。ある自治体の担当者は「建築や土木は3K(きつい・汚い・危険)のイメージがあるのではないか」と推測する。高度成長期以降に建設された道路や橋は老朽化し、点検やメンテナンスの業務が膨れ上がっているといい、別の自治体の担当者は「民間や国と違い、都道府県や市町村は直接住民と対応するため、疲弊して辞める人もいる」と話す。
こうした状況も踏まえてか、イベントではワークライフバランスや働きやすさを打ち出す自治体が目立った。しかし、参加者からは試験内容や受験資格を問う質問が多く、自治体の担当者からは、「人事制度と土木職のやりがい、どちらをPRすればいいのか迷った」と戸惑いの声も出ていた。
建設業は労働基準法の改正で4月から、時間外労働の上限規制(原則45時間、年360時間)が適用され、建設・土木現場はこれまで以上の人手不足になることが予想される。いわゆる「24年問題」だ。
イベントに参加した貝塚市の酒井了市長は、国土交通省の元土木技官。取材に「自治体の技術職は、構想から計画、施工、維持管理と長期スパンで仕事ができる」と強調した。
府は採用試験に先立つ毎年2月に、まちづくりの現場を巡るツアーを開催している。土木系技術公務員のイメージや仕事のやりがいを感じてもらうことで、応募につなげたい考えだ。都市整備総務課の松井麻優副主査は「ツアー参加者が後に府の職員になるケースがある。一定の手応えを感じる」と話す。

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