能登半島地震・ボランティア登録は1万人超でも、続く人手不足 被災者が被災者を支援…状況打開に必要なことは?【news23】

石川県の被災地では1万人あまりが避難生活を続ける中、一部の避難所などで支援するボランティアたちの人員不足が指摘されています。県のボランティアにはすでに1万人以上が登録していますが、なぜなのでしょうか?
被災者が“被災者を支える” ボランティアの受け入れは
被災した市民の暮らしを支える「七尾市災害ボランティアセンター」。日々、被災者からの電話を受け、「今、必要なこと」を聞き取っています。土日も休まず、職員総出での対応が続けられていました。
被災者にとって厳しい状況が続く中、暮らしをどうサポートしていくか。その「重要性」は日に日に高まっています。
七尾市の施設に全国から集まった多くの支援物資。これを、支援団体と地元のボランティアが手分けをして市内にいる被災者に届けているといいます。一方で気がかりなこともあります。
熊本支援チーム 大塚亜由莉さん「地元のボランティアも被災しながらも活動しているので、息抜きというか県外の方がもっと入ったら、その分、地元のボランティアが自分たちの事に集中してくれるかな」
被災地では今、被災者の生活を支える「被災者」が大勢います。
七尾市で避難所の運営を行っている関軒明宏さん(55)もその1人です。関軒さんは自宅の屋根が崩れるなど被害を受けましたが、発生直後から避難者の支援を続けてきました。当初は連日、24時間態勢での対応でしたが、今は3日に1回は自宅に帰れるようになったそうです。
来週から一般ボランティアの活動へ 登録者数1万3200人
関軒さんのような、被災者の負担を減らすために欠かせない「ボランティア」の存在。
石川県が募集したボランティアの事前登録者数は約1万3200人にのぼっていましたが、石川県はようやく23日、七尾市などでの活動の開始時期を「27日」と発表しました。
そして政府も…
岸田総理「多くの個人ボランティアの受け入れが必要となります。活動場所のマッチング支援等の取り組みをすすめていただくようお願いします」
ボランティア活動支援などを盛り込んだ政府の支援策を25日にとりまとめると表明しました。
“いま人手がほしい”被災地 支援団体「自己完結するボランティアを」
ただ、被災地では「“いま”人手を必要とする」地域があります。
穴水町で活動するNPO法人「レスキューストックヤード」は、避難所を回りながら運営状況を確認し、必要に応じた人員や物資の手配を行ってきました。被災者のために奔走しつづけた栗田さん。「人手不足」の現状をこう話します。
レスキューストックヤード 栗田暢之代表理事「そこ(避難所)に支援者が常駐しているかと言えば、常駐できていない。避難所が30何か所もあって(支援者が)全部に行ききれていないのが現状」
しかし、今はまだ一般のボランティアが大勢で入れる状況にはないといいます。
レスキューストックヤード 栗田暢之代表理事「あしたは大雪警報(級)だと言っているが、しっかりと耐えられる方々の存在が非常に重要じゃないかと思う」
ボランティア受け入れにハードル 進まぬニーズの把握
小川彩佳キャスター:取材していて、ボランティアの受け入れにハードルがあると感じましたか?
23ジャーナリスト片山薫記者:これまでも、なかなか難しいという話はありました。石川県は南北に長く、道が狭いということで、災害復旧車両の妨げになってはいけないというのがありました。
さらに被災地は衛生状況もあまり良くなく宿泊もできないので、ボランティアは避けてほしいと呼びかけていました。さらに、被災地のニーズの把握に時間かかっているところもあると思います。
小川キャスター:ニーズの把握が進まないのはどうしてでしょうか?
片山記者:例えば、ボランティアに家の片付けや災害廃棄物の搬送などをお願いする作業、これに結構手間がかかるようです。まず被災者から電話を受けて状況を聞き取るんですが、その後、現地調査をしなければなりません。
全壊なのか半壊なのか、一般のボランティアが行っても安全なのかなどを調べます。全部大丈夫だとなって初めてGoサインを出すので、ここに手間がかかっているということです。
海外の災害支援ボランティア 日本との認識の違い
藤森祥平キャスター:ボランティアに詳しい新潟大学・沢和彦特任教授に話を聞きました。
海外では、ボランティアは災害発生直後に派遣するそうです。日本と同じように大きな地震がたびたび起きているイタリアでは、災害ボランティアは100時間の講習を受けた人だけが行くことになっています。つまり、▼災害現場のリスクや▼被災者心理を学んだ「職能ボランティア」が参加するということです。
日本と海外における“ボランティアの認識の違い”についても聞きました。
日本では「ボランティアは無償で」という意味合いが強いですが、欧米ではVolunteer=志願という意味があります。
イタリアでは国から交通費も出ますし、何かあった場合は国からの補償が受けられるようになっているので、沢さんは「訓練された職能ボランティアの育成や連絡網を作ることが大事ではないか」と指摘しています。
小川キャスター:現状を見ると、やはりニーズの把握が難しいようですね。
宮田裕章慶応大学医学部教授:難しいときには「何が必要とされているか」の把握と「何ができるか」のマッチングになるとは思うんですけど、現状で把握はどのようになっていますか。
片山記者:様々なニーズがあるので、一元的に把握はできていないんじゃないかと思います。当然、職能ボランティアも多く被災地に入っています。
ただ、石川県が募集している1万3000人は職能については考えられていません。看護師や医療経験、大工の経験がありますか?というチェック欄はあるんですけれど、実際に行うのは災害廃棄物の搬入や搬出だけなので、今は職能に合わせたマッチングはされていません。県もそういうことはあまり考えていないようです。
宮田教授:今回みたいに派遣できる人に限りがある場合、何ができるかという情報を足しながらマッチングを行うことがより重要になってくるのかもしれないすね。
政府は「北陸応援割」を検討
藤森キャスター:観光支援という点で、政府は「北陸応援割」を行おうとしています。1人1泊あたり最大2万円まで、旅行代金の50%を補助する案が検討されています。開始時期については、「復興状況や被災者・観光客のニーズに応じて検討を重ねていく」としています。
ちなみに、1月10日時点(※石川県旅行業協会より・県内の23宿泊施設)で石川県内の宿泊キャンセルはのべ2万6648人分、総額・約5億2900万円です。
金沢・近江町市場 「海鮮丼いちば」店主「客足が10分の1程度まで減っている。能登だと輪島朝市とか商売はしばらくできないと思う。自分たちだけ昔みたいに忙しくても申し訳ない。ただ自分たちにも生活がある。商売をやっていかないといけない」
薄井シンシアさん:海外も視野に入れていただきたいですね。2月は旧正月もあるから、親日的な台湾やシンガポールにPRしてほしいんですよ。能登半島地震は海外でも大きく報道されていて、何かしたいという方々も多いので、来てくれるだけで支援になります。
宮田教授:どういう形であれば貢献できるのかを明確にして支援できるといいなと思いますね。
藤森キャスター:石川県内の自治体も発信しているようですけど、より広く深く情報提供できるといいですよね。
被災地への観光支援 優先すべきは?「みんなの声」は
NEWS DIGアプリでは『どんな観光支援を優先すべき?』などについて「みんなの声」を募集しました。
Q.被災地への観光支援 優先すべきは?「業者への金銭的支援」…32.8%「北陸応援割」…31.3%「地域クーポン」…22.9%「その他・わからない」…13.0%
※1月23日午後11時35分時点※統計学的手法に基づく世論調査ではありません

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