能登半島地震で大きな被害を受けた石川県七尾市と穴水、志賀の両町で27日、県が募集したボランティアの活動が始まった。この日は3市町で計75人が参加。2月2日までの1週間で、延べ約560人が災害ごみの片付けや運搬などにあたる。県は今後、派遣先を他の被災地にも広げる方針で、被災者の生活再建を後押しする動きが加速してきた。(池下祐磨、中安瞳、大家広之)
被災地では道路が各地で寸断し交通渋滞も続いていたことから、県はこれまで緊急車両の通行や救援物資の運搬を優先し、一般のボランティアは現地へ入らないよう呼びかけてきた。地震発生から約1か月たち、道路状況が改善してきたため受け入れを決めた。
県に登録したボランティアは県内外で計約1万5300人(27日時点)に上る。県が24日に3市町での活動への参加を募集すると、1週間分の枠が3分で埋まったという。27日は七尾市に17人、志賀町に43人、穴水町に15人が入った。
築100年超で国の有形文化財に登録されている七尾市一本杉町の鳥居 醤油 店では、約15人が崩れた外壁を撤去したり、割れた空き瓶を片付けたりした。
隣接するもろみ蔵は傾き、倒壊の恐れがある。もろみは無事だったが店全体の被害は大きく、店主の女性(69)は一時、廃業を考えたという。周囲の励ましに加え、ボランティアが駆けつけてくれたことで勇気をもらったといい、「この恩は一生忘れない。必ず店を再開します」と誓った。
穴水町川島の男性会社員(54)が母(80)と暮らす自宅は地震で外壁にひびが入り、室内は物が散乱した。この日はボランティアに壊れた食器棚やタンスなどを運び出してもらった。男性は「2日から少しずつごみを外に出してはいたが、高齢の母と2人では重い物は手がつけられなかった。本当に助かった」と感謝した。
ボランティアに参加した三重県伊勢市、アルバイトの男性(56)は、東日本大震災をきっかけに各地の被災地へ駆けつけるようになったという。「小さな力でも結集すれば、復旧が前に進むと信じている」と語った。石川県野々市市から参加した大学生(19)は「被災者はがれきの山を見るのもつらいと思う。限られた時間だが、住民の心の支えになりたい」と力を込めた。
被災地は断水が続き宿泊施設も限られるため、県は当面、金沢市内と現地を往復するバスを用意し、日帰りでボランティア活動してもらうことにしている。県幹部は「被災地は高齢者が多く、ボランティアへの期待は大きい」と話す。2月3日以降の参加者は今月末に募集するという。
一方、特に被害が大きい輪島、 珠洲 の両市は、ボランティアのニーズ調査が済んでいないため受け入れの見通しが立っていない。輪島市では20日に調査が始まったばかりだ。珠洲市社会福祉協議会の担当者は「高齢者の食事や入浴支援などに追われ、調査にまで手が回っていない」と嘆いた。