昨年、各地で深刻な被害を出したクマを巡り、環境省の専門家検討会は8日の会合で、ヒグマとツキノワグマを捕獲が国の支援対象となる「指定管理鳥獣」に新たに指定する対策方針案を取りまとめた。個体数が20頭程度の四国地方、すでに絶滅した九州地方は対象に含まれない。環境省は今後、鳥獣保護管理法の省令改正を行い、令和6年度中の運用開始を目指す。
「指定管理鳥獣」は、都道府県が捕獲計画を立て、国が交付金で支援する。夜間の銃猟も可能になる。平成27年2月にニホンジカとイノシシが指定されている。
環境省によると、令和5年度のヒグマなどクマ類による人身被害は、今年1月末までに全国で197件発生。218人が襲われ6人が死亡した。統計のある平成18年度以降で最多のペース。クマは地方の少子高齢化や都心回帰などから北海道、東北地方を中心に全国的に生活圏を拡大しており、推定個体数も増加傾向にある。
昨年11月には東北6県と北海道、新潟県の知事らが、クマの指定管理鳥獣への追加指定を要望。環境省は専門家検討会を設置し、12月から議論を進めていた。
今回、検討会では委員からは「同じようなことがいつどこで起きても不思議ではない。対策を強力に進める必要がある」などの声があり、クマの追加指定案を了承した。
一方、クマはニホンジカやイノシシと違い個体数が少なく繁殖力が強くないことから、提案では過度な捕獲を行わない姿勢も明示。生息状況の観察を行い、担う人材の育成を行うことも盛り込まれている。
8日の会合では、委員から「シカ、イノシシと違うクマ型の支援メニューが必要。個体の保全にも十分な配慮する必要がある」「捕獲が先行するのではなく、モニタリング(観察)の充実が重要。交付金は(クマの)出没抑制にも使えるようにしてほしい」などの要望があがった。