刑務所での受刑者への本の差し入れは、差し入れる側1人につき月3冊まで――。そんな制限の妥当性が争われた訴訟の控訴審で、東京高裁は制限を違法とし、国を逆転敗訴とする判決を言い渡した。鹿子木康裁判長は「書籍は教養を身につけるために有効で、差し入れは重要だ」と述べた。
原告は栃木刑務所(栃木県栃木市)で服役する女性受刑者。同刑務所では2020年1月、書籍の受け入れ業務が 逼迫 しているとして、それまで差し入れる側1人当たり1日1回3冊までとしていた規則を変更し、月1回3冊までに激減させた。原告側は「裁量権を逸脱した違法な数量制限だ」などとして、国に220万円の損害賠償を求める訴えを起こした。
昨年3月の宇都宮地裁栃木支部判決は、「受刑者が費やせる読書時間に照らして必要かつ十分で、書籍閲覧の機会を著しく失わせるとまではいえない」として請求を棄却した。
これに対し、今月15日付の高裁判決は、同刑務所を除く全国58か所のうち、1日1回3~6冊までとする刑務所が55か所に上っていると指摘し、「栃木刑務所は漫然と違法な数量制限を設けたといわざるを得ない」と判断。受刑者が本の購入代金を支援団体に送ることを制限したことなどの違法性も認め、8800円の賠償を命じた。
法務省矯正局は「判決内容を精査し、適切に対応する」とコメント。同刑務所は昨年12月、書籍の差し入れ数を元に戻したという。