林信吾(作家・ジャーナリスト)林信吾の「西方見聞録」【まとめ】・「ミス日本コンテスト2024」グランプリはウクライナ出身の女性。・ミス日本運営事務局、当人の辞退の申し出を受理し「ミス日本2024」は空位に。・「芸能界のしきたり」も「体育会系のノリ」も、命脈絶たれて久しいことに気づくべき。 1月22日に行われた「ミス日本コンテスト2024」と、その後の一連の騒動は、すでに大きく報じられた通りだが、私としても、色々と考えさせられた。まず、今年の受賞者すなわち56回目のグランプリに輝いたのは、ウクライナ出身の女性。ハーフではなく両親ともにウクライナ人で、5歳の時に一家で日本に移り住み、日本国籍は1年ほど前に取得したそうだ。発表された直後から、ネットには賛否両論の投稿が殺到し、いくつかのニュース番組では特集まで組まれていた。否定派の意見の中でも、「やまとなでしこの遺伝子を尊重すべきである」などというのは、低レベルの排外主義に過ぎないので、相手にする気にもなれないのだが、ひとつひっかかったのは、「ロシアにルーツを持つ女性だったら、選ばれなかったのではないか」「政治利用では?」といった投稿が見受けられたことだ。ネット民だけではなく、著名な作家までが同様の見方を開陳していた。ウクライナは昔から美人が多いことで知られている。歴史的・地理的条件から、ロシアや北欧と、南欧及び中近東の血を共に引く人が多いから、という理由であると聞く。だが、政治利用とはいくらなんでも……と半信半疑であったところへ、当の女性が授賞式のスピーチで「日本人として認められた」喜びのみを語って、目下かの国で起きている事態に対して一言もコメントしなかったと、在日ウクライナ人の間からは非難がましい声が聞かれる、との報道に接することとなった。政治利用などとは考えにくい。もうひとつ、あるインフルエンサーが、「ミス日本は、ミス・ユニバースやミス・ワールドの日本予選ではないのだから、これが日本の美だ、という価値観を発信して欲しかった」「金髪の白人を美の基準にされたのでは、生粋の日本人女性に勝ち目はない」と発信したこと。この人は「人種差別は断じてあってはならないが」と前置きして語っていたので、私の方でも、言いたいことは分からないでもないが、と前置きして私見をのべさせていただくとしよう。時代を超えて普遍的な「これが日本の美だ」という価値観など、存在するのだろうか。
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・「ミス日本コンテスト2024」グランプリはウクライナ出身の女性。
・ミス日本運営事務局、当人の辞退の申し出を受理し「ミス日本2024」は空位に。
・「芸能界のしきたり」も「体育会系のノリ」も、命脈絶たれて久しいことに気づくべき。
1月22日に行われた「ミス日本コンテスト2024」と、その後の一連の騒動は、すでに大きく報じられた通りだが、私としても、色々と考えさせられた。
まず、今年の受賞者すなわち56回目のグランプリに輝いたのは、ウクライナ出身の女性。
ハーフではなく両親ともにウクライナ人で、5歳の時に一家で日本に移り住み、日本国籍は1年ほど前に取得したそうだ。
発表された直後から、ネットには賛否両論の投稿が殺到し、いくつかのニュース番組では特集まで組まれていた。否定派の意見の中でも、
「やまとなでしこの遺伝子を尊重すべきである」
などというのは、低レベルの排外主義に過ぎないので、相手にする気にもなれないのだが、ひとつひっかかったのは、
「ロシアにルーツを持つ女性だったら、選ばれなかったのではないか」「政治利用では?」
といった投稿が見受けられたことだ。ネット民だけではなく、著名な作家までが同様の見方を開陳していた。
ウクライナは昔から美人が多いことで知られている。歴史的・地理的条件から、ロシアや北欧と、南欧及び中近東の血を共に引く人が多いから、という理由であると聞く。
だが、政治利用とはいくらなんでも……と半信半疑であったところへ、当の女性が授賞式のスピーチで「日本人として認められた」喜びのみを語って、目下かの国で起きている事態に対して一言もコメントしなかったと、在日ウクライナ人の間からは非難がましい声が聞かれる、との報道に接することとなった。政治利用などとは考えにくい。
もうひとつ、あるインフルエンサーが、
「ミス日本は、ミス・ユニバースやミス・ワールドの日本予選ではないのだから、これが日本の美だ、という価値観を発信して欲しかった」
「金髪の白人を美の基準にされたのでは、生粋の日本人女性に勝ち目はない」
と発信したこと。この人は「人種差別は断じてあってはならないが」と前置きして語っていたので、私の方でも、言いたいことは分からないでもないが、と前置きして私見をのべさせていただくとしよう。
時代を超えて普遍的な「これが日本の美だ」という価値観など、存在するのだろうか。