創刊55周年記念 特別インタビュー ウクライナ侵攻開始から2年、厳しさ増す日本の安全保障 「核共有もタブーなしで議論すべき」河野克俊・元統合幕僚長

ロシアのウクライナ侵攻開始から24日で丸2年となった。東アジアでは北朝鮮がミサイル発射を繰り返し、中国が領土的野心を隠さない。日本はどうやって自国を守ればいいのか。自衛隊制服組トップの統合幕僚長を4年半にわたり務めた河野克俊氏(69)が夕刊フジ創刊55周年の特別インタビューに応じ、厳しさを増す日本の安全保障環境について語った。国民の自衛隊に対するイメージも大きく変わったが、今後のあり方についても言及した。

ロシアはウクライナの東部と南部の計4州を一方的に併合した。昨年のウクライナの反攻は思うように進展せず、守勢に回っている。
河野氏は「ウクライナが西側の軍事援助に頼っていることが一番の弱点だといえる。ウクライナは当面は守りを固める戦略と思われるが、ウラジーミル・プーチン大統領の戦争目的はウクライナの非軍事化、中立化、非ナチ化だ。4州を取っても目的を達成したことにはならない。ウォロディミル・ゼレンスキー政権を倒すところまで続けるのではないか」と話す。
西側諸国の「支援疲れ」も目立つようになってきた。
「援助が小出しであることが最大の問題だ。西側諸国はロシア国内を攻撃できるような射程の長い兵器を引き渡すとともに、ウクライナ国内の防衛産業構築も急ぐべきだ。日本の復興支援も否定はしないが、戦争を終わらせることを考えるのが先だ。装備も渡せるものは渡す。これは政治決断でできる」
ロシアはウクライナに対して核を威嚇に使った。これが核不拡散条約(NPT)体制を揺さぶっていると河野氏は強い懸念を示す。
「核保有国のロシアが、非保有国のウクライナを核で威嚇したことで、北朝鮮が核を持つ理屈を正当化してしまう。日本の安全保障環境にとって極めて深刻な状態だ」
日本周辺では、中国が勢力拡大を進めている。海洋上に一方的に定めた「第一列島線」の中国側には香港、台湾と沖縄県・尖閣諸島がある。
「香港は完全に抑えられた。台湾では、中国に屈服しないスタンスの頼清徳次期総統選の任期は2028年だ。習近平政権の3期目が終わるのは27年なので、政治的な併合は難しいと判断し、軍事力も含めた併合を狙う可能性もある」と警鐘を鳴らす。
自衛隊が抱える矛盾解消を
「台湾有事は日本有事」といわれるが、台湾有事に日本や日本人が戦争に巻き込まれること以外にも重大なリスクがあると河野氏は強調する。
「中国は、台湾併合という目的のために尖閣に手を出すことは恐らくないだろう。日米安保条約の適用対象となって米軍が出てくるためだ。逆に言えば、尖閣は無人島だから攻撃する必要がない。台湾を確保すれば日本のシーレーン(海上交通路)である台湾海峡は中国に抑えられ、経済的にも非常に苦しくなる。自衛隊が尖閣に常駐していないのは戦略上、非常にまずい」

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