民事裁判に「ウェブ口頭弁論」導入、審理短縮化へ…法廷でモニター通じてやり取り

民事裁判の原告側と被告側が法廷で顔を合わせて行ってきた口頭弁論に、1日からインターネットを使った「ウェブ会議」が導入された。民事裁判の全面IT化の一環で、裁判の効率化や利便性の向上とともに、長年の課題となっている審理期間の短縮化につながるかが焦点になる。
導入を目前に控えた2月26日、東京地裁で行われた模擬裁判でウェブ会議による口頭弁論が実演された。
裁判官役らが法廷に姿を見せた一方、原告側代理人役は弁護士事務所からウェブ参加したという設定で、その姿が法廷のモニターに映し出された。裁判官役と代理人役がモニターを通じて訴状の陳述などのやり取りを行い、手続きは約1分半で終了した。
民事裁判のIT化は段階的に進められており、2020年2月、まずは非公開の争点整理でウェブ会議が導入された。
公開の法廷で行われる口頭弁論は、原則として当事者の出廷が民事訴訟法で義務付けられていたため対象外だったが、22年5月に改正民訴法が成立。裁判所が相当と認める場合、口頭弁論でもウェブ会議を行えるようにする規定が盛り込まれ、3月1日に施行された。
同地裁で民事裁判を担当する金沢秀樹・部総括判事は「代理人に少しでも空き時間があれば、ウェブで口頭弁論を行える。効率良く審理を進められるようになるだろう」と話す。
特に利用が広がるとみられるのが、当事者が遠方に住んでいることの多い高裁での審理だ。
東京・霞が関にある東京高裁の場合、管轄が1都10県(東京、神奈川、静岡、長野、新潟など)に及ぶ。都外の当事者も口頭弁論のたびに同高裁に赴いていたが、新潟県弁護士会の朝妻太郎弁護士は「数分の口頭弁論のために東京まで半日かけて行く必要がなくなり、他の業務に集中できる時間が増える」と歓迎する。
訴状のネット提出や裁判記録の電子化も

民事裁判のIT化は今後、訴状のネット提出や裁判記録の電子化などの「最終段階」に進み、25年度中には全面実施される見通しだ。IT化には審理の迅速化を図る狙いもある。
政府の司法制度改革審議会は01年に意見書を公表し、証人尋問などを行った民事裁判の1審の平均審理期間が20・5か月に及んでいることに触れ、これを半減することを目標に掲げた。しかし、22年の平均審理期間は23か月超で、むしろ長くなっている。
山本和彦・一橋大教授(民事訴訟法)は「審理の長期化は当事者にとって大きな負担だ」と指摘。「企業同士の紛争解決には特にスピード感が求められており、裁判所はIT化の環境を整えるとともに、危機感を持って迅速化に取り組む必要がある」と話している。

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