太平洋戦争末期の米軍による無差別爆撃で一夜に約10万人が亡くなったとされる東京大空襲から79年となった10日、東京都墨田区の都慰霊堂で追悼法要が営まれた。
秋篠宮ご夫妻や遺族ら約200人が参列。小池百合子都知事は「記憶を風化させないよう語り継がなければならない」と述べた。祖父母と叔父を亡くした遺族代表の大日向弘行さん(83)は、「空襲があった日が近づくと子どもや孫に戦争の体験を伝えている。悲惨な出来事を繰り返してはいけない」と話した。
この日、慰霊堂の前に献花台が設けられ、多くの人が花を手向けた。母や妹ら家族5人を失った千葉県市川市の女性(90)は、「家族に元気でやっているよと伝えるために毎年通っている。世界では戦争がまだ続いているのが悲しい」と目に涙を浮かべていた。
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都は2月から、都内各地の空襲資料展で、30年近くにわたり「お蔵入り」となっていた空襲体験者らの証言映像を公開している。都庁で10日開かれた平和の日記念式典には、映像に出演した北区の女性(85)も出席。「戦争の愚かさや悲しさを後世に伝えなければならない」と話した。
女性は6歳の時、旧深川区(現江東区)の自宅で空襲に遭った。映像では、母に連れられて燃えさかる街を逃げ惑い、近くの学校に避難した様子を振り返り、「 焼夷 弾の熱さで人が川に飛び込んだ」「朝になると、プールに人が大勢浮いていた」と当時の光景を生々しく語った。取材に対し、女性は「戦争になると、平穏な暮らしを送っていた一般人ばかりが犠牲になる」と訴えた。
証言映像は、都が1995~99年、体験者330人に取材して集めた。だが、上映する予定だった「平和祈念館」の建設計画が頓挫。長らく倉庫に保管されていたが、ロシアのウクライナ侵略を機に映像の活用を求める声が高まり、都は出演者らの同意を得た122人分を公開した。公開はいったん14日で終わるが、今後も上映を検討している。