民間単独で国内初となる人工衛星の軌道投入に挑んだものの、13日午前の打ち上げ直後に爆発した小型固体燃料ロケット「カイロス」。宇宙事業会社スペースワン(東京都港区)の豊田正和社長は同日午後、記者会見し「期待に沿えず申し訳ない」と悔しさをにじませた。原因究明を急ぐと強調する一方、「出発点に立ったつもりで頑張る」と再起を誓った。
「あたたかく応援、支援してくださった皆さまの期待に十分に応えられなかった」。記者会見冒頭、豊田社長は登壇した同社の役員2人とともに深々と頭を下げた。
当初9日に予定されていた打ち上げは、発射場近隣の海域に設定していた「海上警戒区域」内に、発射予定時間になっても船舶が残留していたアクシデントで延期に。今回は警戒船の数を増やしたり、エリアの手前で早めに迂回(うかい)を呼び掛けたりして万全を期したはずだった。
しかし、13日午前11時1分12秒に打ち上げられたカイロスはわずか5秒で爆発。快挙はまたも、持ち越しとなった。
予定していた飛行ルートを外れるなどの異常が生じた際、安全確保のために機体を爆破する装置が自動的に作動したというが、詳しい原因は分かっていない。会見では同社の役員が「詳細は調査中。原因究明に全力を尽くす」と繰り返す場面が目立った。
今回はミッションを達成できなかったスペースワンだが、宇宙開発市場で世界に後れを取る日本にとって、同社のような民間宇宙事業者の役割は大きい。同社は既に民間企業などから3号機までの打ち上げを受注しており、早期の原因究明と打ち上げ再開に期待がかかる。
豊田社長は「スペースワンとしては、『失敗』という言葉を使わない。一つ一つの試みの中に新しいデータや経験があり、全て今後の挑戦に向けた糧になるからだ」と前向きな姿勢を強調。阿部耕三執行役員も「民間企業として初めてロケット発射場をゼロから建設し、顧客の獲得、リフトオフ(発射)まで到達した。まだ誰も達成できていないところまで来ている」と手応えを口にした。
遠藤守取締役は「一つ一つ乗り越えていくことがロケットの信頼性を高める。まずは予断を持たずに原因究明をするのが重要」と話し、小型ロケットの安定的な打ち上げ実現へ意欲を燃やした。