埼玉県内で鉄製品の窃盗が相次いでいる。秩父鉄道(埼玉県熊谷市)の車両基地から、貨物列車の鉄製車輪計76枚が盗まれたほか、川越市や日高市では道路側溝にかぶせてある鉄製メッシュ状の蓋が相次いで盗まれている。これら事件の背景には、鉄スクラップの価格高騰があるとみられる。増加する金属窃盗に県警は「買い取り業者には、買い取りの際の身分確認の徹底や、不審な持ち込みがあったら通報するように呼び掛けている」としている。
秩父鉄道によると、鉄製車輪が盗まれているのが分かったのは5日朝。出勤してきた社員が車両基地に保管してあった車輪がなくなっているのに気づいた。2日夕方には普通に保管されているのを確認していた。
車輪は直径78センチで、重さは1枚約270キロ。4枚ずつ梱包(こんぽう)されており、1セットで1トンを超える。車両基地には計92枚保管されていた。車両基地は防犯カメラなど設置されていなかった。秩父鉄道は熊谷署に被害届を提出している。
また、川越市と日高市では3日から7日にかけて、市道の側溝などにかぶせてあった鉄製メッシュ状の蓋が計約30枚盗まれた。蓋は重さは1枚約17~70キロもあった。両市はそれぞれ川越署と飯能署に被害届を出している。
こうした鉄製品を盗む理由は、販売目的の可能性がある。
県警捜査3課と上尾署が1月、水道メーターを盗んだとして窃盗容疑で逮捕した男=同罪で起訴=は、逮捕時に関係先から10個の水道メーターが押収されており、県警は転売目的で盗みを繰り返していたとみて余罪を調べている。
リサイクルの業界団体関係者によると、1トン当たりの鉄スクラップ価格は長く2万円前後で推移してきたが、資源価格の高騰などもあり令和2年後半から上昇。以降5万円前後で高止まりしているという。
この関係者は「通常、スクラップ業者は盗品と分かるようなものは買い取らない。業界内には、盗品も買い取る業者がいるとの噂もあるが、実態は不明だ」と話している。
県警によると、金属を対象にした非侵入窃盗は年々増加。2年には157件だったものが、5年には702件にまで増えている。