フェイスブック(FB)などのSNSで実業家の前沢友作氏らをかたる偽広告による投資詐欺被害が広がっている問題で、神戸市などに住む男女4人が「被害が予見できたのに偽広告を表示させた」として、SNS運営会社メタの日本法人(東京)に計約2300万円の損害賠償を求め、今月内にも神戸地裁に提訴することがわかった。
原告弁護団によると、4人は、FBやインスタグラムで、前沢氏らになりすまして投資を呼びかける偽広告を閲覧し、アクセス。アシスタントを名乗る人物らとやり取りし、投資資金として指定された口座に送金したという。
原告側の訴えでは、メタ社はSNS上の広告について、事実の誤りや被害の恐れがないかを調査し、偽広告が含まれていないか注意すべきだったのに、それを怠ったと指摘。「被害が予見できたのに偽広告の掲載の場を提供し、広告収入を得ていた」と主張する。
原告の一人で、三重県に住む50歳代の女性が取材に応じた。
女性は昨年9月、前沢氏の写真が載った広告をインスタグラムで閲覧。誘導されたLINEのグループに「投資の勉強がしたい」との思いで参加し、勧められるままに13回にわたり計約600万円を指定口座に入金したが、出金しようとすると拒まれたという。
女性は「前沢さんが言うならもうかると思い、送金してしまった。後悔している」と語った上で、メタ社に対し、「同じような被害が広がらないよう対応してほしい」と求めた。
前沢氏も提訴準備
自身があたかも勧誘しているかのような虚偽広告がSNS上で横行しているとして、前沢氏と堀江貴文氏は、プラットフォーム(PF)事業者の規制を含めた迅速な対応を求めている。
2人は自民党本部で10日に開かれた会合に出席し、被害状況を説明。前沢氏は、偽広告の削除要請に応じていないとし、メタ社の提訴に向けた準備を進めていることも明かした。
国も対策の検討を進めている。松本総務相は9日の閣議後記者会見で「なりすまされた方も社会的評価を下げられる可能性がある」と言及。総務省の有識者会議がPF事業者から聞き取りを行っているとした。
一方、メタ社は16日、「PF上での詐欺を根絶するための行動を取り、警察当局とも連携している。詐欺対策の進展には、産業界、専門家、関連機関との連携による社会全体でのアプローチが重要だと考える」とのコメントを公表した。
この問題では警察への被害申告も相次ぐ。今月に入り、東京都の70歳代男性が約1億4000万円、神戸市の50歳代女性が約5260万円をだまし取られたとし、それぞれ警視庁と兵庫県警が詐欺事件として捜査していると発表。他にも多数の被害が起きているとみられる。