自転車ヘルメット浸透せず、都内着用9%…「面倒」「置き場所ない」「髪形崩れる」

努力義務化1年

昨年4月に努力義務化された自転車のヘルメット着用が浸透していない。普及には地域でばらつきがあり、東京や大阪では1割を下回っている。致命傷を防ぐ効果があり、専門家からは対策の強化を求める声も上がっている。(村上喬亮)

東京北部のターミナル・北千住駅(足立区)。4月30日夕、駅前通りを自転車で行き交う親子連れやスーツ姿の人たちのなかにヘルメットを着用している人はほとんど見られなかった。
警察庁によると、自転車乗用中の事故ではヘルメットを着けていない人の致死率が着用者の2倍近くに上る。被害軽減には頭部の保護が重要で、昨年4月施行の改正道路交通法でヘルメット着用が努力義務になった。罰則や強制力はない。
警視庁が昨年12月~今年1月、都内112か所を走る自転車約11万台を調べたところ、着用率は9・1%(男性13%、女性4・3%)で前年の4・1%から5ポイント上昇したが、それでも1割に達していない。
北千住駅前通りの着用率はこの調査でワースト2位の2・5%だった。買い物帰りの女性(75)は「努力義務化は知っているけれど、みんな着けていないし、私も着けない。自転車には小学生の頃から乗っているから大丈夫」と話した。
大阪府警が今年1~3月に行った調査でも、着用率は5・8%にとどまった。警察庁の昨年7月の調査では、最も高い愛媛県が59・9%、2番目の大分県が46・3%だった一方、最も低い新潟県や続く青森県は2%台と地域差がみられた。全国平均は13・5%だった。
なぜ浸透しないのか。都が昨秋、非着用の人にアンケート(複数回答可)したところ、「着用が面倒」(47・9%)が最も多く、「置き場所がなく荷物となる」(38・6%)、「髪形が崩れる」(31・8%)が続いた。デザインの改善を求める声も多かった。
警察庁によると、自転車が絡む事故は昨年、全国で7万2339件に上り、2020年の6万7673件から3年連続で増えた。警察は全国で交通安全のキャンペーンを行い、ヘルメット着用を訴えている。

自治体も対策を進めている。今年度、新潟県は18歳以下のヘルメット購入に助成金を出す市町村への一部補助を開始。香川県は高校生を対象に上限5000円の購入補助を始めた。東京都教委は都立学校の生徒が自転車通学する場合、ヘルメット着用を条件とした。
着用率トップの愛媛県は、県立高校の生徒に通学時の着用を義務付けた2015年、生徒約2万9000人にスポーツタイプのヘルメットを無償配布した。県教委の担当者は「抵抗感をなくすことで着用率の向上につながった」と話す。
メーカーも工夫を進める。ヘルメット大手「オージーケーカブト」(大阪)では、カジュアルな帽子型など約40種類を取りそろえ、持ち運び可能な折りたたみ型や髪形が崩れにくいヘルメットの開発も検討している。
桜美林大の戸崎肇教授(交通政策)は「着用には煩わしさがあり、努力義務には限界がある。通学時の着用を必須にするなど、国や自治体は新たな対策を検討すべきだ」と指摘する。

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