“紀州のドン・ファン”と呼ばれた資産家の男性を殺害したとして3年前に起訴された元妻が10日、別の事件の裁判で姿をみせました。
ただ、資産家の殺人事件については初公判のメドすら立っていません。
背景に何があるのか、元検事の弁護士に聞きました。
3年ぶりに公の場に姿を見せた女が10日、法廷で裁判長に問われて答えました。
──名前は?
「須藤早貴です」
──住所は?
「今はありません」
“紀州のドン・ファン”こと野崎幸助さん(当時77)を殺害したなどの疑いで逮捕・起訴された元妻の須藤早貴被告(28)です。
事件があったのは6年前。須藤被告は報道陣に囲まれ、「事件から1か月経ちますけど、何か思われることはありますか?」「なんで今日は戻ってこられたんですか?」と質問を浴びていました。
野崎さんは、須藤被告との結婚から3か月後に不審死しました。
年の差は55歳。野崎さんの著書によると2人が出会ったのは事件が起こる1年前で、羽田空港で転んだ野崎さんを優しく助けたのが須藤被告だったといいます。
「キミの人生をピンク色に染め上げたい。ボクの最後の女性になってくれませんか?」
著書によると野崎さんはこうプロポーズの言葉を送り、2人は結婚しました。
自宅の寝室で、遺体で見つかった野崎さん。資産家として知られ、2016年に自宅を取材した時にはカバンの中に現金200万円があり、タンスには1500万円もの大金が置かれていました。
自伝も出版──
(『紀州のドン・ファン 美女4000人に30億円を貢いだ男』、『紀州のドン・ファン 野望篇 私が「生涯現役」でいられる理由』(講談社+α文庫))
「私がお金を稼ぐ理由は、なんと言っても魅力的な女性とお付き合いをしたい、その一点に尽きます」
「仕事も女性とのお付き合いも『死ぬまで現役』と心に誓っております」
「過去、私がお付き合いした女性は4000人を下らず、それに使ったお金は30億円くらいになるでしょう」
“生涯プレイボーイ”を宣言していました。
亡くなった野崎さんの体内からは、多量の覚醒剤の成分が検出されました。警察は遺体に注射痕がないことから、何者かに覚醒剤を口から摂取させられた可能性が高いとみて捜査を進めていました。
2018年、須藤被告は「(野崎さんが)覚せい剤を使用していたことはあったんでしょうか?」「見たことはありますか?」「覚醒剤の使用を見たことや現場にいたことはないんですか?」と報道陣からマイクを向けられましたが、何も語ろうとしませんでした。
また、事件前には別の不審死もありました。野崎さんがかわいがっていた愛犬「イブ」。覚醒剤の成分は検出されませんでしたが、野崎さんが亡くなる18日前、もがき苦しむように異常な死に方をしたといいます。
多くの謎に包まれた事件は、2021年に須藤被告の逮捕という形で一気に動きました。
3年後の5月10日。この事件とは別の裁判で、須藤被告は法廷に姿を見せました。腰までの長い髪に、上下黒の服でした。
ただ、世間を騒がせた野崎さんをめぐる事件については、いまだ初公判のメドすら立っていません。なぜなのか、元大阪地検検事の亀井正貴弁護士に聞きました。
亀井弁護士
「3年に至ってまだその先が見えていない、公判の計画がまだ見えていないというのは珍しいと思います」
「例えば検察官の請求証拠が膨大で、それに対する証拠開示の手続きも時間がかかっている。例えば弁護団の方針が途中で変わったとか、予定していなかった争点が増えるとか、弁護団の体制が変わるとか」
(5月10日『news zero』より)