1980年代まで中国・揚子江の中下流域で生息し、現在は絶滅したとされるヨウスコウカワイルカ類の世界最古の新種の化石が群馬県と栃木県で見つかり16日、群馬県立自然史博物館(同県富岡市)が発表した。これまで化石は北米だけで見つかっており、アジアでの発見は初めて。
群馬県産は平成11年、安中市の碓氷川で同市在住の化石愛好家が見つけ、同館に寄贈していた。1100万年前のもので、北米最古の化石より100万年以上さかのぼる。栃木県産は24年、宇都宮市の鬼怒川で当時、中学生だった男性が発見し、栃木県立博物館などが発掘した。1000万年前のものとみられる。
いずれも骨格などが同じで、鼻骨などの形状から原始的な特徴を持つ新種とされ、学名「エオリポテス ジャポニクス」として日本古生物学会が発行する英文の学術雑誌に掲載された。イルカやクジラの研究調査実績がある自然史博物館で栃木県産と合わせて調査していた。
ヨウスコウカワイルカは一般的なイルカと異なり淡水環境に生息しているが、今回の化石はともに海水環境の地層で見つかった。調査にあたった同館の木村敏之学芸員は「海洋から淡水環境へと適応していった進化の解明にもつながる」と今後の展開に期待する。
両館とも18日から収蔵化石(一部レプリカ)を特別展示する。自然史博物館の真鍋真特別館長は「群馬、栃木とも現在は『海なし県』などといわれるが、当時は海で、後に川へと乗り込む好奇心旺盛なイルカが生息していたことを来館して実感してほしい」。
山本一太知事は定例会見で「自然史博物館は先月もクジラの新種発見を公表している。今は『海なし県』だが、海洋生物の研究に貢献している点は大変、誇らしい」と語った。